1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10558078
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
藤井 靖彦 東京工業大学, 原子炉工学研究所, 教授 (20016869)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 達也 若狭湾エネルギー研究センター, 研究員
野村 雅夫 東京工業大学, 原子炉工学研究所, 助手 (60100997)
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Keywords | 炭素同位体分離 / 同位体効果 / 一酸化炭素 / 四配位錯体 / カルボニル化合物 |
Research Abstract |
前回の報告書において炭素同位体分離のための基礎研究として、ab-initio計算による金属錯体/COの分子振動解析を行い、理論分離係数の評価を行った。当初、この結果を踏まえ、六配位のカルボニル錯体を実験的に扱う予定であったが、実験的な取り扱いが難しいため、本研究においては、塩化銅(I)アンモニア水溶液を触体とした、四配位のカルボニル錯体を取り上げた。気相/液相系におけるCOガス吸着における系を選択した。塩化銅(I)水溶液にCOが溶けると、Cu(I)とCOは強い錯体を作ることが知られており、大きな同位体効果が期待できると考え本系を選択した。同位体交換反応は以下のような化学反応式で示される。 ^<13>CO(g)+Cu(^<12>CO)(NH_3)_3Cl(l)【tautomer】^<12>CO(g)+Cu(^<13>CO)(NH_3)_3Cl(l) この系で同位体分離係数を実験的に求めた。CuCl(0.5mol/l),NH_4Cl(4.0mol/l)の混合溶液において、COを反応容器に導入し、1atmで系が平行に達するまで保持した。一定時間保持の後、系内のCOをCO_2に変換し二重収束型質量分析計を用いて^<13>C/^<12>Cの比を測定した。ガス吸着量と同位体比の変動値より同位体分離係数を算出したところ温度(5℃-28℃)の範囲で分離係数α=1.0112〜1.0237であり、低温の時が最も高かった。温度Tと分離係数αの関係は、かつてアマルガムの系等で示された、α-1=a/T+b/T^2の経験式でフィッティング出来ることが分かった。aは軽元素の低温における分子振動の項であり、一方、bはより高温の周囲条件による項である。すなわち、化学的な同位体効果は2つの異なったタイプの同位体効果によるものである。ここで、aとbは異符号であり(a=-39.5,b=12856)、同位体偏在が逆転するいわゆるクロスポイントが存在し、その温度が325Kで有ることを明らかにした。CO錯体系の同位体効果を明らかにするためにはさらなる理論解析が必要であることが分かる。
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