1999 Fiscal Year Annual Research Report
解糖系酵素の遺伝子発現調節機構を利用した有用蛋白質生産のための動物細胞工学
Project/Area Number |
10559014
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐々木 隆造 京都大学, 大学院・生命科学研究科, 教授 (60077378)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白井 義人 京都大学, 大学院・生命科学研究科, 助教授 (50175395)
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Keywords | エリスロポエチン / 細胞工学 / 低酸素 / 遺伝子発現 / 乳酸脱水素酵素 / プロモーター / CHO細胞 |
Research Abstract |
動物細胞による蛋白質生産系の大きな問題点の一つは酸素供給である。他の栄養素は一時に過剰に添加することが出来るが、酸素は溶解度が低いため連続的に供給する必要がある。この結果、二つの問題が生じる。(1)動物細胞は撹拌など剪断力をに対して脆弱であり、多くの改良がなされたとはいえ酸素供給は常に細胞損傷を伴う。(2)蛋白質の高生産を目指して活発な代謝を維持するための酸素の大量供給は、ATP生産のためのミトコンドリア機能をフル回転させることとなり、活性酸素が活発に生産され細胞死を招く。この研究は、これらの問題点を解決するために、低酸素により発現が誘導される遺伝子の特徴を利用したものである。 低酸素に応答して発現が誘導される遺伝子は多数発見されており、解糖系の酵素乳酸脱水素酵素A(LDHA)もその一例である。この遺伝子のプロモーターの特徴は、通常の酸素圧下でも強い転写活性を持ち、なお且つその活性が低酸素で誘導されることである。LDHAのプロモーターの下流にEPO遺伝子を接続したプラスミドを作製し、これをチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)細胞に導入し、多数の細胞株を取得した。この細胞株の中には、常酸素圧でもEPOを大量に生産し、しかも低酸素圧では更に生産が強く誘導される細胞株を発見した。なお、プロモーターの低酸素応答部位に変異を導入した場合には、EPOの生産が低酸素で誘導される株は得られず、酸素に応答する遺伝子の特徴が利用されていることを証明することが出来た。
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