1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10610001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
千葉 恵 北海道大学, 文学部, 助教授 (30227326)
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Keywords | 本質 / 弁証術 / ロギコース / 非因果論的 / 自体的同一性 |
Research Abstract |
本研究はアリストテレスにおける形而上学における二つの基礎づけと言える弁証術と科学理論の解明が目標である。本年は弁証術の本性と方法の研究に主に取り組んだ。とりわけ本質(トティエーンエイナイ)の概念が問答の規則化である弁証術において形成されたことを明らかにした。それは日本西洋古典学会第49回大会において、「アリストテレスの弁証術における本質について-トティエーンエイナイの言語分析を手掛かりに-」という題で発表され、審査を経て同学会の47号に掲載された。さらに、その展開として本質が、質料に秩序を与える形相としばしば同定される箇所を見い出すことができることから、従来は事物の存在根拠として理解されてきたが、それが誤りであることを論じた。本質が形相と同定されるのは、質料の根拠であるからではなく、形相がそれ自体として自己同一を保つ端的な存在であるが故にであることを、北大文学部紀要47巻4号で「アリストテレスの本質の非因果論的解釈」という題のもとに論じた。弁証術的な概念である本質は自然における因果構造にコミットしてはおらず、「いかに語るべきか」というロギコースな視点から自体的な同一性を表現するものとして形成されたことを論じた。また、哲学雑誌における特集「ギリシア.中世哲学研究の現在」(113巻785号)において「アリストテレス哲学における方法論--形而上学の可能性を開くもの」という題のもとに、方法論の視点からアリストテレスの形而上学の可能性を追及した。その間オックスフォード大学や九州大学、慶応大学、東京大学等において自説のレヴユーを受け、以上の議論をさらに展開することができた。これらの研究を通じて今年度の所期の目的は達成されたと考えている。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 千葉 恵: "アリストテレス哲学における方法論-形而上学の可能性を開くもの-" 哲学雑誌. 113・785. 55-73 (1998)
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[Publications] 千葉 恵: "アリストテレスの弁証術におけるτοτι ηυ ειυαι(本質)" 西洋古典学研究. XLV11. 76-86 (1999)
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[Publications] 千葉 恵: "アリストテレスにおける本質の非因果論的解釈" 北海道大学文学部紀要. 47・4. 1-52 (1999)