1999 Fiscal Year Annual Research Report
清末・民国期の知識人におけるナショナル・アイデンティティ形成とジェンダーの関係
Project/Area Number |
10610015
|
Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
坂元 ひろ子 一橋大学, 社会学部, 教授 (30205778)
|
Keywords | 中国優生学 / 纏足 / ジェンダー / ナショナル・アイデンティティ / 譚嗣同 / 西洋のまなざし / 国民の母 / 国民の身体 |
Research Abstract |
9月にまずイギリス、ロンドン大学SOASのFrank Dikotter博士を訪ね、ワークショップにおいて、前年度の研究成果である拙稿「恋愛申請と民族改良の『科学』--五四新文化ディスコースとしての優生思想--」(『思想』894)のレビューを受けた。中国優生学の新しい本を出版したばかりのFrank Dikotter博士からは新たな資料の紹介をはじめ、ドイツ優生学との関連について教示をうけた。同所で貴重な資料もみつけることができた。 さらに、同月、フランス、パリのCentre National de la Recherche Scientifique所長、Marianne BASTlD-BRUGUIERE教授を訪ね、纏足問題にみるナショナル・アイデンティティ形成とジェンダーの関係についての報告をしたうえで、所内の関係研究者からもレビューをうけた。関連のフランスにおける研究動向についても教示を受けた。また、College de Franceの図書館、the new National Library、the Foreign Ministry Archiveで貴重な資料を閲覧した。 これらの成果をふまえて優生思想と纏足廃止問題を結びつけ、以下の論証をおこなった。中国の国民国家をたちあげる(近代化)の過程で課題とされた纏足廃止(放足・天足)動を開始したのは男性変革者で、理解しがたい異教徒の野蛮な習俗として蔑む、宣教師経由の西洋のまなざしが投影されていた。肉体的な変形加工を千年以上にわたる風俗、ファッションととして受け入れられていた女性の纏足を、譚嗣同や梁啓超らをふくむ男性変革者らが「国恥」として女性に精神的外傷をも与えることにもなった。放足・天足こそは、学校教育とともに、女性を「国民の母」として認知し、強種を保証する「国民の身体」そのものを形成するために不可欠なイニシエーションであり、試練であった。
|
Research Products
(2 results)