1999 Fiscal Year Annual Research Report
古典インド思想における命題論理としての背理法とその応用の研究
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10610016
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
吉水 清孝 北海道大学, 文学部, 助教授 (20271835)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
細田 典明 北海道大学, 文学部, 助教授 (00181503)
藤井 教公 北海道大学, 文学部, 教授 (70238525)
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Keywords | 背理法 / arthaapatti / クマーリラ / ミーマーンサー |
Research Abstract |
本研究代表者は、今年度の研究を総括する論文「arthaapattiとanumaanaとの論理学上の相違について」で次のような研究成果を発表した。「外出想定のarthaapatti」を敢えてanumaanaの形式に当てはめれば、「チャイトラは外にいる」「生きていて家にいないから」「生きていて家にいないものは誰であれ、外にいる」という三支作法の論証式が出来上がる。けれども、「チャイトラは外にいる」を導き出すために、現実には、チャイトラ以外の人物について家の中にいるか外にいるかを検討する必要はない。クマーリラは、連言や選言の機能を解明して命題論理学の体系を築いたわけではないけれども、論理学の根幹に関るひとつの問題提起を行った。即ち、常に全称肯定文を推論の根拠とするanumaanaとは異なったやり方で、或る命題から別の命題を導出することが可能なのではないかという論理学上の見通しを、anyathaanupapattiという名称での背理法による導出の方向づけと共に提起したのである。外遍充論の立場であれ内遍充論の立場であれ、いずれのanumaanaも「基本xに或る属性Pがあれば、xには別の属性Qがある」という、基体となる個体一つと二つの属性との相関関係を個体領域において普遍化することにより、述語論理のような量化を伴う論理体系のなかで論証をおこなう。これに対し、クマーリラにおいては未だ見通しの域を出ていないにせよ、「外出想定のarthaapatti」は、全称量化子による全称肯定文を必要とせず、チャイトラ-人を主語とした命題だけを用いて命題論理の範囲内で論証しようとするものである。それ故、「外出想定のarthaapatti」の論理形式をanumaanaに還元することはできない、と言うことができる。来年度には、本研究代表者は、研究分担者の協力の下に、スートラの時代からクマーリラ以前にかけてのミーマーンサー学派におけるarthaapattiとanumaanaの関係を解明し、研究分担者がこれまでに収集した資料とも比較検討しつつ、3年間の研究成果をまとめて報告書を作成する。
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[Publications] 吉水清孝: "シャバラによるスートラ2.1.5の理解に向けて"印度学仏教学研究. 47,2. 61-67 (1999)
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[Publications] 吉水清孝: "srutarithappattiによる認識の対象について"仏教学. 40. 1-22 (1999)
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[Publications] 吉水清孝: "arthapattiとanumanaとの論理学上の相違について"印度哲学仏教学. 14. 14-17 (1999)
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[Publications] 藤井教公: "天台智〓における四悉檀の意義"印度学仏教学研究. 47-2. 27-35 (1999)
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[Publications] 藤井教公: "中国仏教における「仏種」の語の解釈をめぐって"東洋の思想と宗教. 17. 1-18 (2000)
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[Publications] 細田典明: "『ブリハッド、アーラニヤカ、ウパニシャッド』と『ダンマパダ』ー樹の比喩について"印度哲学仏教学. 14. 102-111 (1999)