1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10610019
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
桂 紹隆 広島大学, 文学部, 教授 (50097903)
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Keywords | ナーガルジュナ / 中論 / 中観派 / インド論理学 / 世俗 / 勝義 / プラーサンギカ / チャンドラキールティ |
Research Abstract |
1.インド論理学の発展に対するナーガールジュナの貢献、および、インド論理学史における彼の位置づけに関する研究論文を1999年10月7-9日ワルシャワ大学で開催された「シャイエル記念国際サンスクリット学会」で発表し、クラウス・エトケを始めとするヨーロッパのインド学者たちから有益なコメントを得た。研究論文の内容は、本プロジェクトの研究成果報告書に収めると同時に、年内に刊行される同学会のプロシーディングスに発表する予定である。 2.1999年11月末から2週間、イリノイ州立大学のマーク・シデリッツ教授が広島大学を訪れた。この機会に、ナーガールジュナの哲学思想に関する密度の濃い意見交換をすることが出来たが、同時に年来の課題である『中論頌』の英訳のネイティブ・チェックを受けた。残念ながら、数章しか完成することは出来なかったが、今後互いに日米間を行き来することにより、協力して『中論頌』の英訳を公表することについて同意に達した。未だ英語としては未完成であるが『中論頌』の英訳も、本プロジェクトの研究成果報告書に収める予定である。 3.本年度得た新しい知見としては、シデリッツ教授との議論を通して、日本の研究者の間で広く受け入れられているプラーサンギカ派のチャンドラキールティのナーガールジュナ理解に批判的な彼独自の二諦論解釈を挙げることが出来る。シデリッツ教授によると、中観派にとって、すべては世俗諦であり、勝義諦というものはまったく存在しない、という考えである。
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