1998 Fiscal Year Annual Research Report
近代科学の成立と自然神学の関連をめぐって-ニュートン主義の神学的受容を中心に-
Project/Area Number |
10610025
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
芦名 定道 京都大学, 文学研究科, 助教授 (20201890)
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Keywords | 自然神学 / ニュートン / ニュートン主義 / 広教主義 / ボイル・レクチャー / コミュニケーション合理性 |
Research Abstract |
平成10年度は近代科学の成立と自然神学との関係をめぐる諸問題のうち、とくに次の点について研究を進め所定の成果を上げることができた。 (1) ニュートンの宗教思想とニュートン主義の自然神学について ニュートンの未刊行の草稿群(とくにヤフダ文書)が研究に利用できるようになって以来、啓蒙的近代におけるニュートン像(実証主義の科学者、近代科学の父)の再検討が進められてきている。本研究ではこうした新しいニュートン研究の中心テーマである彼の神学思想(自然神学、聖書解釈、歴史神学)の全体像の解明を試み、そこに神の支配、秩序、単純性などの基本理念が見いだされることを確認した。これによって、ニュートンの思想宇宙の全貌が明らかになったと思われる。 (2) 17世紀イギリスの自然神学のイデオロギー性について ニュートンあるいはボイル・レクチャーで活躍したニュートン主義者の自然神学の意義は、当時のイギリスの歴史的状況、とくに宗教的政治的な中道派穏健派である広教主義との関わりの中に位置づけるとき、十分な仕方で理解可能なものとなる。本研究ではジェイコブらの先駆的研究を参照しながら、ニュートン主義の自然神学の社会的イデオロギーとしての機能を解明し、新しい近代的な社会システムへの移行期においてそれが果たした役割を検討した。 (3) 自然神学と宗教的コミュニケーションの合理性との関係について 神の存在論証を中心テーマとした自然神学に対しては、現代のキリスト教思想において否定的な議論が少なからず見られるが、本研究では、神の存在論証の本来の意味を再検討することによって、自然神学をキリスト教信仰の合理性、とくにコミュニケーション合理性の問題として再評価すべきことを明らかにした。
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