1999 Fiscal Year Annual Research Report
近代科学の成立と自然神学の関連をめぐって-ニュートン主義の神学的受容を中心に-
Project/Area Number |
10610025
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
芦名 定道 京都大学, 文学研究科, 助教授 (20201890)
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Keywords | 自然神学 / 自然哲学 / ニュートン / ブルトマン / パネンベルク / 終末論 / 広教主義 |
Research Abstract |
平成11年度は近代科学とキリスト教思想の関係をめぐって次の研究成果を上げることができた。 (1)ニュートンの『ダニエルの預言とヨハネ黙示録についての所見』によって、ニュートンの歴史神学と聖書解釈学を具体的に分析し、その前提となっている神理解を明らかにした。これによって、ニュートンの自然科学や自然哲学と、神学(自然神学、歴史神学、聖書解釈)とを統合する神概念の位置づけと、自然哲学の中心的役割を確認することができた。 (2)ニュートンの宗教思想をキリスト教思想史の中に位置づけるために、ニュートンの終末論を西欧の黙示的終末論の連関において解釈することを試みた。これによって、ニュートンの宗教思想が、広教主義の思想的立場を代弁するものであり、彼の思想(ニュートン主義)が自然科学や自然哲学を含めて、社会イデオロギーとして機能していることが明らかになった。この観点から見るならば、近代科学とキリスト教自然神学が積極的関わりを有することも理解可能になる。 (3)現代キリスト教思想における「宗教と科学」の問題状況をギルキー、トランス、パネンベルクらの所論、とくに彼らのニュートン理解を手掛りに整理し、現代の思想的状況において神学と科学の新たな関係構築のポイントが自然哲学にあることを明らかにした。ブルトマンやティリッヒ以降の状況における自然神学の構築を視野に入れるとき、ニュートンの宗教思想は新たな意味を獲得することがわかった。
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