近世後期「神話空間の変容」とその倫理思想史的研究

1998 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 10610034
• Research Institution: Tokyo University of Science
• Principal Investigator: 清水 正之 東京理科大学, 工学部, 教授 (60162715)
• Keywords: 日本神話 / 日本倫理思想史 / 平田篤胤 / 鈴木重胤 / 和辻哲郎 / 国学 / 近世思想 / 本居宣長

Research Abstract

本研究は、近世思想の一領野でおる「神話の解釈」史、その中でも近世後期、とくに本居宣長以降の平田篤胤の日本書紀を中心とする神話解釈の構造を明らかにし、あわせて、そこに展開される倫理思想を考察するものである。この近世後期の神話解釈は、中世神道論の近世の残照ともみられるが、実際は、近世的世界解釈による新たな展開を見せる。又、近世後期の膨大な世界解釈の一つである。
(1) 本年度は、平田以降、とくに鈴木重胤、飯田武郷の、近代に近接した神話空間、神話解釈の分析を継続した。中でも祭祀の議論を中心に考察を試みた。
(2) 併せて、近世神話解釈の思想史的な意義の確定のため、中世以降の空間観の変容の側と、日本近代哲学の神話解釈の位置づけの双方から、神話解釈と倫理思想という問題を考察し、二つの具体的成果として発表した。前者は「日本の死生観-無常の空間をめぐる思想史-」という題で、中世的無常が近世の空間観のなかにどのように変容し吸収されるかという考察の中で、宣長の神話解釈を考えた。後者は、和辻哲郎の神話解釈が近世的な神話解釈の流れにあることを論じた。
両者を通じ、近代の神話解釈がきわめて近世的な神話解釈の特質と流れの中にあることがわかり、それによって近世後期の神話解釈の倫理思想史的な考察に寄与するものが多いと考えている。

Research Products

• [Publications] 清水正之: "日本の死生観 - 無常の空間をめぐる思想史" 実存思想論集. XIII. 89-106 (1998)
• [Publications] 佐藤康邦・清水正之・田中久文: "甦える和辻哲郎" ナカニシヤ出版, 257 (1999)