1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10610047
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Research Institution | Gunma Prefectural Women's University |
Principal Investigator |
戸澤 義夫 群馬県立女子大学, 文学部, 教授 (50011383)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大内 典 宮城学院女子大学, 学芸学部, 助教授 (50213632)
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Keywords | 故郷 / 国民国家 / 音楽教育 / 中学校 / 女学校 / 師範学校 / キリスト教 |
Research Abstract |
今年度は、岩手大学、金沢大学、大阪教育大学、愛知教育大学、そして盛岡、金沢、名古屋、大阪の各県立図書館、市立図書館を調査する作業を続ける傍ら、大正から昭和初期にかけての教育一般、音楽教育に關する図書の調査・蒐集にもつとめ、さらに各都市での、伝統のある小学校、ミッション系の女子学校等を訪問し、各学校の図書館の蔵書や周年記念誌を紹介してもらい、その内容の調査・蒐集にも努めたことによって、かなりの資料の蒐集に成功した。 調査結果として、金沢大学には、戦後の音楽関係教科書はほぼ完璧に揃っていること、大阪教育大学には戦前の音楽教科書が、小学校のものだけでなく、中学校、女学校、師範学校のものが体系的に揃えられていることが判明し、以前調査してあった京都教育大学所蔵のものと照合することによって、戦前の教科書の出版状況の概要を把握するメドがようやく立つに至ったことは、いまだ未整理の部分があるとはいえ、かなりの成果であると思われる。(大阪教育大学には再調査にいく予定である。) さらに内容的な面では、11年度の音楽学会全國大会において「日本近代における家郷創出」というシンポジウムを主催して、音楽における日本の近代化の過程でナショナルなものの創出がいかなる問題性を持っていたかを多角的側面から追求した。また、当時の教育理論書における芸術とナショナルなものの位置付けをという視点から、上記各図書館で発見した山田榮、北村久雄、青柳善吾、井上武らの理論書の内容を追求しているとろであるが、差し当っての結論として、音楽には、例えば、松永伍一の『日本農民詩史』に見られる、先鋭かつ生活に根ざした芸術運動は見い出し難く、むしろナショナルなものの情念化・抒情化に積極的役割を果たしてきたようであり、そこに近代日本における音楽の在り方の最大の問題性があると捉えている。
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