1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10610061
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
河野 道房 大阪府立大学, 総合科学部, 助教授 (90195678)
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Keywords | 画論 / 優劣 / 品第 / 流派 / 分類 / 勧戒 / 六法 / 文人画 |
Research Abstract |
三年計画の初年度にあたる平成10年度は、計画のとおり、もっぱら中国絵画関係文献の調査、および資料収集にあてられた。具体的には、京都大学、竜谷大学等の古典籍調査や、文献資料の購入を行い、中国の絵画関係文献の収集整理に努めた。 その結果、以下のような知見が得られた。すなわち既存の中国画論の取り扱われ方は、書誌学の遠大な伝統に基づく緻密な形式論と、哲学や文学ともからむ芸術思想の立場での議論との二系統に大別される。そしてそれらは一定の成果をおさめてきたが、近代的な美術史学の立場からは、やや難解で利用しづらい憾みがある。なによりも作品主体の美術史学からの積極的なが取り組みが不足気味であり、作品の吟味批評に較べれば文献資料のクリティークは重視されていたとは言い難い。 これらの事象を鑑みれば、作品の検討に直接結ぶつくような、文献資料の新たな分類と意味付けが必要であり、それは日本の画論を解釈する際にも重要な指標となるであろう。そこで中国の絵画関係文献をその内容から便宜的に鑑賞論、制作論に二分し、その中で種々な概念を体系化することに努めた。いわゆる優劣論、品第論、流派論、分類論等を鑑賞論の系譜として理解し、勧戒論、六法論、山水画論、文人画論等を制作論の系譜として一応の整理を行った。それら各概念の消長や転変によって、絵画に対する見方や認識が時代によっていかに変化したかを理解しなければ、分類や概念も意味を持たない。 まだ整理の段階だが、次年度には捕足の後、日本の古代中世の画論に移る予定である。
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