2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10610061
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
河野 道房 大阪府立大学, 総合科学部, 助教授 (90195678)
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Keywords | 画論 / 源氏物語 / 古今著聞集 / 仏日庵公物目録 / 君台観左右帳記 / 品等 / 等伯画説 / 図絵宝鑑 |
Research Abstract |
平成12年度は、古代・中世の日本絵画関係文献の形式と内容を中国の画論と比較検討整理した後、近世絵画関係資料の整理検討にあてられた。また三年間の総まとめを行った。 その結果、『古今著聞集』は『礼記』『孝経』という儒教経典を踏まえており、『歴代名画記』に類似する画家の逸話をのせていること、『仏日庵公物目録』は南宋以降一般化する著録類・目録類と共通する形式をもつこと、『君台観左右帳記』は画家品等論と工芸品取り扱いマニュアルの二系統よりなり、明代に発達した風雅な文人の総合的生活指南書との関係が注目されること、などが明らかになった。 また近世の画論を整理・検討した結果、近世に至って初めて本格的な画論の書が出現し、中国画論の模倣から離れようとする姿勢が顕在化することが判明した。特に、享保(1716〜36)以前の前期画論を代表する『等伯画説』では、元の『図絵宝鑑』を踏まえながら述べられている等伯の見解の独自性が検証された。享保以降の文人画論を中心とする画論群は、予想以上に膨大な内容を包含していることが判明し、すべてを考察することはできなかった。現時点で日本画論の古代から近世に至るまでを概観すると、以下のようになる。 日本の画論は早くから魏晋南北朝〜唐の画論を摂取しており、『源氏物語』『古今著聞集』等にそれらを日本の風土に消化した片鱗が見られる。中世には『仏日庵公物目録』『君台観左右帳記』のような、南宋〜明に成立した目録やマニュアルという絵画関係文献の形式を取り入れた文献が出現する。近世に至って本格的な絵画論が出現し、日本の風土に根ざした画論の模索が始まり、文人画論が移入されると以後はそこに収束してゆくのである。
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Research Products
(1 results)