2000 Fiscal Year Annual Research Report
中世末・近世初期における折本画帳の研究-比較メディア論的方法による
Project/Area Number |
10610065
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Research Institution | Musashi University |
Principal Investigator |
大西 廣 武蔵大学, 人文学部, 教授 (30011307)
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Keywords | 折本画帳 / 壁的な絵 / 本的な絵 / 比較メディア論 / 絵の居場所 / 桃山時代 / メディアの転換期 / 正典化の機能 |
Research Abstract |
本研究は、平成10年度からの三年計画で、桃山時代に発生した絵画メディアである折本画帳に焦点を当て、比較メディア論的視点からの問題開発を行おうとしてきたものである。当初の計画に基づき、(I)折本画帳の成立についての文献的研究、(II)現存遺品から見たその実態の認定、(III)比較メディア論的方法による中世末・近世初期折本画帳の歴史的位置づけ、という3点に沿って研究を進めてきたが、最終年度の本年は、全体のまとめとして、上記3点めの比較メディア論的方法による検討に重点をおいて研究を行い、その成果を、平成11年7月から二年間の予定で連載執筆している、朝日新聞社刊行『国宝と歴史の旅』に掲載の論文(「絵の居場所」)に、大幅に盛り込むことができた。 その要点をまとめると、(1)絵画メディアは、室内規模のメディアである「壁の絵」(壁画、襖絵、屏風絵、掛軸の絵)と、手許のメディアである「本の絵」に大別することができる。(2)このようなメディア論的観点が従来の絵画史研究には欠けていたが、この観点の導入によってはじめて、総じて絵画の歴史が、日本にかぎらず、「壁の絵」から「本の絵」へと重点を移しながら展開してきたことを明らかにすることができる。(3)日本においては、その「壁の絵」から「本の絵」への転換は、中世後期から近世初期にかけて、とくに屏風絵から絵入り版本への転換を契機に急激に進行していったことを確認することができる。そして、(4)まさにその過程にあって、折本画帳のメディアが出現し、「壁の絵」から「本の絵」への移行の橋渡しの役割をしたといえる。 以上の成果を盛り込んで、現在、執筆継続中の上記の連載は、近く(平成13年5月)完結するので、全体を報告書として作成する予定である。なお、三年計画のうち(I)(II)の成果はデータベースとしてネットワーク上で利用できるようにしたいと思っている。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] 大西廣: "場を格付けするイメージ・システム"国宝と歴史の旅. 5. 55-59 (2000)
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[Publications] 大西廣: "中世絵画のパフォーマンス"国宝と歴史の旅. 6. 55-59 (2000)
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[Publications] 大西廣: "似絵と伝頼朝像のあいだ"国宝と歴史の旅. 7. 55-59 (2000)
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[Publications] 大西廣: "「語り物」文化の巨大水脈"国宝と歴史の旅. 8. 55-59 (2000)
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[Publications] 大西廣: "雪舟「天橋立国」の逸脱"国宝と歴史の旅. 9. 55-59 (2000)
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[Publications] 大西廣: "屏風絵の行くえ-安宅の室礼から展覧会芸術へ"国宝と歴史の旅. 10. 55-59 (2001)
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[Publications] 大西廣: "一休をめぐって何か起ったか-肖像画における破格の問題"平凡社. 105 (2001)