1998 Fiscal Year Annual Research Report
認知課題の遂行における個人差とメタ認知的知識の利用に関する実証的研究
Project/Area Number |
10610071
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉川 左紀子 京都大学, 教育学研究科, 助教授 (40158407)
|
Keywords | メタ認知 / 認知課題の遂行 / 個人差 |
Research Abstract |
本研究の目的は、さまざまな認知課題(顔、風景の記憶、イメージ操作、物語理解等)の遂行において、どのようなメタ認知的知識が用いられ、それらがどのような機能を果たしているか、また課題遂行成績の個人差がそうしたメタ認知的知識の特性とどのように関わっているのかを実証的に明らかにすることである。本年度は、画像再認記憶課題にみられる個人差とメタ認知との関係を調べる目的で、104名の大学生を対象に、顔写真および風景写真を刺激とした短期保持(20分)、長期保持(3週間)再認記憶課題、および知能検査の言語課題・空間課題を行った。結果の分析では、画像記憶課題で自発的に用いた記憶方略(課題固有のメタ認知)と再認記憶成績の個人差の関係、および知能検査言語課題と空間課題の成績と再認記憶課題の成績の個人差との関係に焦点を絞って検討している。被験者はスライドプロジエクタでブロック提示される風景写真と顔写真各20枚(計40枚)を記憶した後、使用した記憶方略についての質問に回答し、続いて知能検査言語課題と空間課題を行った。その後、記銘刺激(顔写真10枚、風景写真10枚)の半数にデイストラクタを加えて再認記憶課題を行った。3週間後に記銘刺激の残りの半数にデイストラクタを加えて遅延再認課題を行った。顔の短期保持課題の成績は顔の長期保持課題、風景の短期、長期保持課題の成績と低い相関があったが、他の再認記憶課題との間には相関はみられなかった。また、知能検査の言語課題、空間課題と顔・風景の再認記憶課題との間にも相関はみられなかった。記憶方略と再認記憶成績との関連は、顔写真では全体のバランスに注目する方略を高頻度で使用した被験者の記憶成績が比較的高く、既知人物との連合方略の有効性は確認されなかった。
|