1999 Fiscal Year Annual Research Report
認知課題の遂行における個人差とメタ認知的知識の利用に関する実証的研究
Project/Area Number |
10610071
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉川 左紀子 京都大学, 教育学研究科, 助教授 (40158407)
|
Keywords | メタ認知 / 個人差 / 無関連聴覚刺激 / 文章再生 |
Research Abstract |
本研究の目的は、さまざまな認知課題(顔、風景の記憶、イメージ操作、物語理解等)の遂行において、どのようなメタ認知的知識が用いられ、それらがどのような機能を果たしているか、また課題遂行成績の個人差がそうしたメタ認知的知識の特性とどのように関わっているのかを実証的に明らかにすることである。本年度は、無関連聴覚刺激が、文章の記銘・再生課題の遂行成績におよぼす干渉的影響と、無関連聴覚刺激に対する課題遂行中および遂行後の主観的評価との関係を調べた。無関連聴覚刺激としては、源氏物語に関する講演を録音した音声、パソコン、ファックスなどの無機的な雑音を用いた。聴覚刺激の提示は、文章の記銘中、再生中、記銘と再生中という3条件で行った。再生課題が終わったあと、妨害音がどれくらい気になったか、日常生活において音情報を聞きながら知的作業を行うと干渉が生じるか、といった聴覚音による妨害に関する主観的評価(メタ認知判断)を求めた。実験には大学生、大学院生が参加した。 実験の結果、文章再生課題の遂行成績は、聴覚刺激が提示されることによって有意に低下すること、聴覚音による妨害に対する主観的評価と実際の遂行成績の関係は、遂行成績が高く、実際の妨害効果が小さい人ほど主観的評価では妨害効果が大きいとする傾向があることが伺えた。これは、妨害に対するメタ認知的判断には、遂行時に投入した処理資源の大きさ、あるいは注意の集中に要した努力の大きさに対する主観的評価が反映されているためではないかと考えられた。無関連聴覚刺激の提示位置と遂行成績、提示位置とメタ認知判断との間にはとくに明確な関係はみられず、記銘時と再生時のいずれかに提示した場合と、両方に提示した場合で、遂行成績に差はなかった。
|
Research Products
(1 results)