1999 Fiscal Year Annual Research Report
日本語文の読みにおいて眼球停留位置を規定する要因の分析
Project/Area Number |
10610081
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Research Institution | Sakushin Gakuin University |
Principal Investigator |
松田 真幸 作新学院大学, 経営学部, 助教授 (20219447)
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Keywords | 日本語文 / 読み / 表記形態 / 眼球運動 |
Research Abstract |
本年度ははじめに,前年度に行なった実験から得られたデータの分析を続けた.この実験は,文の黙読を課題として文の表記形態(表記文字と文節間空白)を操作したものである.まず,読みの時間と眼球運動の諸測度(停留数,逆行率,順行サッカードの大きさ,停留時間)に関する分析で文節間空白の影響を表記文字の条件別に検討した.その結果,平仮名文の場合には,空白のある文は空白のない文に比べてより短い時間で読まれ,停留数がより少なく順行サッカードがより大きいこと,漢字仮名交じり文の場合には,読みの時間や眼球運動の諸測度に文節間空白の影響は認められないことが明らかとなった.これらの結果は,平仮名文の読みでは空白が促進的効果をもち,漢字仮名交じり文の読みでは漢字が平仮名文や英文の読みにおける空白に相当する役割を果たしていることを示唆している.続いて,眼球停留位置のうち,とくに文節に対する最初の停留位置(第1停留位置)に関する分析を行なった.その結果,第1停留位置は文節の中央よりもはじめ寄りに置かれること,文節間空白がある場合には空白がない場合よりも文節の中央寄りに第1停留が置かれること,第1停留位置は直前の停留位置が当該の文節から離れているほど文節のはじめ寄りに置かれることが明らかとなった.これらの結果は,文節に対する第1停留位置はランダムに決定されているのではないことを示唆している. さらに本年度は,第2実験として,文の表記形態として漢字表記の使い方(平仮名を漢字に置き換える際,文字単位とするか,単語単位とするか)と文節間空白の有無を操作した実験も行なった.これまでの分析で,単語単位の場合の方が文字単位の場合よりも読みの時間が短いが,文節間空白の影響については被験者間で一貫した傾向は認められないことが明らかとなった.今後は,眼球運動の諸測度に関する分析を行なう予定である.
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