1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10610083
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
坂上 貴之 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (90146720)
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Keywords | 予測ゲーム課題 / チキンのジレンマ / ゲーム / 選択行動 / 動的変容過程 / TFT方略 |
Research Abstract |
本年度は、選択行動の動的変容過程を見るのに最もふさわしいと考えられるゲーム事態での行動研究を遂行するために、1.ゲーム事態の方法論的・理論的位置づけ、2.ゲーム事態における行動の制御変数の同定、の2つを基本的なテーマに据えて研究を進めた。1の方法論的位置づけについては予測ゲーム課題(PGT)を考案し、この課題が今までになされてきた様々な実験手続き、すなわち選択行動を調べる並立および並立連鎖強化スケジュール、基礎生起確率の錯誤を調べる確率見本合わせ、記憶を調べる遅延見本合わせとその変形の分化的結果付きの遅延見本合わせ、動物実験で標準的に用いられたゲーム課題、ヒトでの確率的弁別学習課題、の全てをその手続きの一部に含むものであることを示した。1の理論的位置づけについては、行動分析で今までに提案されてきた数理モデルを整理し、このゲーム事態での実験的研究のシミュレーションに適したモデルの可能性を検討した。2については、ラットを用いたPGTでの選択行動をみた。PGTとは、指示刺激(第1弁別刺激)、選択行動、表示刺激(第2弁別刺激)、遂行反応、強化子の各事象の継時的な出現からなる手続きである。指示刺激と表示刺激の一致・不一致はゲームにおける相手側(この場合は環境側)の、指示刺激と選択行動の一致・不一致は自分側の、協調と裏切りを表すことになり、その結果として強化子呈示に必要とされる遂行反応量は、利得行列の値を表すことになる。実験では利得行列としてチキンのジレンマゲームを採用し、指示刺激を一方に固定して選択行動を見た。指示・表示両刺激の提示位置の一致率が100%(環境が常に協調)条件、0%(常に裏切り)条件、50%(ランダム)条件において適切な選択行動が示された。また環境側がTFT方略(おうむ返し方略)を採る条件では、巨視的最大化を示さない被験体がおり、現在その制御変数を同定中である。
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