1999 Fiscal Year Annual Research Report
作動記憶における注意機能:事象関連脳電位を用いた検討
Project/Area Number |
10610089
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Research Institution | Sapporo Gakuin University |
Principal Investigator |
沖田 庸嵩 札幌学院大学, 社会情報学部, 教授 (70068542)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
諸富 隆 北海道大学, 教育学部, 教授 (60003951)
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Keywords | 作動記憶 / 注意 / 事象関連電位 / 両耳分離聴 / 意味記憶 / 漢字認知 / 顔認識 |
Research Abstract |
昨年度の基礎資料を参考に,本年度は次の3つの事象関連脳電位(ERP)実験を実施した. 1.認知課題遂行に要請される注意の切り換え 昨年度の両耳分離聴事態における実験で,注意方向の切り替えが作動記憶項目の利用を困難にするという知見を得た.その実験では異なる単語対を1秒間隔で呈示したが,今回は2秒に延長し,注意切り替えの時間的余裕を与えた.しかし,その結果は被験者間で一貫せず,先の実験で観察されたN400における反復効果も注意切り替え効果も見出されなかった.本結果は刺激間隔の延長による時間的な余裕から,作動記憶貯蔵の先行項目情報を利用せず,単語提示毎に独立に課題(非単語検出)遂行に必要な処理を実行したと推察される. 2.意味記憶アクセスにおける注意効果 被険者に漢字を一文字づつ提示し,先行刺激とテスト刺激の意味関連性を判断する条件と黙読条件で実験を施行した.テスト刺激に応答するERP変化をみると,意味判断課題ではN400・P3bといった後期成分で意味プライミング効果が観察され,無課題条件ではそれより短い潜時のP200でプライミング効果を認めた。本結果は,上記の聴覚実験とも一致して,読語認知に関わる処理レベルが課題(注意の配分)に応じて変わることを示しており,注意制御系の役割を明示している. 3.人の顔認識 昨年度に引き続き基礎資料の収集となったが,今年度は人の顔に特異に応ずる右側紡錘状回がゲシュタルト的な顔処理に関わっているという最近の認知心理学的な報告を受けて,そのERP表出をN170成分で探ってみた.左・右刺激視野,正立・倒立,顔・目・物品と3要因で刺激を操作した結果,左視野の正立顔に惹起された右後側頭部(T6)導出のN170は,他の刺激に比べて,約20msほど潜時が短縮する傾向を示した.来年度は作動記憶における顔刺激情報の検索などを検討する予定である.
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