1998 Fiscal Year Annual Research Report
幼児期における「友だち関係」の成立と崩壊過程に関する研究
Project/Area Number |
10610093
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
本郷 一夫 東北大学, 教育学部, 助教授 (30173652)
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Keywords | 幼児 / 友だち関係 / 仲間関係 / 集団保育場面 |
Research Abstract |
幼児の仲間関係のうち、2者間あるいは3者以上の幼児間の親密な関係である「友だち関係」の成立と崩壊の実態を把握するとともに、「友だち関係」の成立と崩壊にかかわる要因を明らかにすることを目的として研究を行った。 対象は、3〜5歳の幼児23名であり、環境移行(保育所間の移行と保育所内での移行に分けられる)に伴う幼児の友だち関係の変化を縦断的に追跡した。観察時間は、1幼児当たり1時期40分間とし、1年間に3回の観察を行った。 分析にあたっては、VTRに記録された子ども間の相互作用を17の行動カテゴリーに分け、他児に対する働きかけ、他児からの働きかけの頻度を求め、子ども間の対人関係マトリックスを描いた。次に、観察頻度が期待値と比べ有意に大きい子ども間の関係を抽出し、「友だち関係」とした。その結果、(1)保育所間の移行という比較的大きな環境移行を集団で経験した場合、幼児の「友だち関係」は維持されにくく、新たな集団での「友だち関係」が改めて成立すること、(2)同一保育所内での生活においては5歳児を中心として「友だち関係」が維持されやすいこと、(3)女児に比べて男児間で「友だち関係」が維持されやすいこと、(4)「友だち関係」にある子ども同士の相互作用においては、同年代の子ども同士の相互作用に比べて、「他児への呼びかけ」や「自分が行っている(あるいは行おうとしている)行動の叙述」が比較的多くなされることが明らかにされた。これらの行動は、他児との間で対象を共有しようとする働きかけや自分自身の行動を他児に認めて欲しいという欲求の現れだと考えられる。また、「友だち関係」の成立と崩壊過程を明らかにするためには、2者間の相互作用だけではなく、集団の構造を考慮した分析が必要であることが示唆された。
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