1998 Fiscal Year Annual Research Report
健常児との比較による発達障害児の語連鎖形成能力に関する研究
Project/Area Number |
10610102
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
大伴 潔 東京学芸大学, 教育学部, 助教授 (30213789)
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Keywords | 言語発達 / 語連鎖 / 文法 / 音形 / 発音 / 言語発達遅滞児 / 健常児 |
Research Abstract |
日本語習得児における初期の語連鎖を意味的・統語的観点から分析する試みはあるが、語連鎖発達を音形的発達と合わせて理論的枠組みに入れた研究は見当たらない。本年度は、対象としている言語発達遅滞児の中でも、特に1名の表出性言語発達遅滞児(3歳8ヶ月から5歳2ヶ月まで追跡)と3名の健常児(1歳9ヶ月から2歳4ヶ月まで追跡)に焦点を当て、これらの児における言語発達過程を音形面と統語面双方から検討した。その結果、言語発達遅滞児では、表出語彙数、1語を構成する音節数、1発話に含まれる文節数のすべての側面において、同時期に一様に急速な改善を示したことが明らかになった。さらに、表出性言語発達遅滞児および健常児の両者において、音形面と統語面が並行して発達する過程が確認された。特に興味深いのは、健常児において音形面で変化の著しく、単語が3音節以上で構成され始めた20-21カ月と24-25カ月の時期の間は、統語的にみても2語文が出現しその比率を増す時期と一致していたことである。3音節以上の音形を獲得するということと、語連鎖を形成するということには、何らかの共通する言語固有の、もしくは認知的な基盤が存在している可能性がある。一般的には発語音形の巧緻化とより複雑な語連鎖形成は各々独立した領域の事象として捉えられているが、本研究の結果は、これらは相互に関連したものであるか、あるいは何らかの能力基盤を介して相互に影響を与え合う可能性を示唆している。言語発達のメカニズムを検討するにあたり、構音発達と統語発達の両側面を包括的に捉えて検討する必要性が示唆された。
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