2000 Fiscal Year Annual Research Report
健常児との比較による発達障害児の語連鎖形成能力に関する研究
Project/Area Number |
10610102
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Research Institution | TOKYO GAKUGEI UNIVERSITY |
Principal Investigator |
大伴 潔 東京学芸大学, 教育学部, 助教授 (30213789)
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Keywords | 言語発達遅滞 / 健常児 / 言語発達 / 語連鎖 |
Research Abstract |
最終年度である本年は、健常児および発達障害児の発話のデータベース資料の解析を行い、語彙種類数、平均発話長、助詞の使用等の分析を行った。また、昨年度の「ことばの類推」課題の発展として、健常児および発達障害児に連続する2枚の絵場面について説明を求めた際の発話データの解析を行った。この課題の対象は、生活年齢(CA)3;1から4;8までの15名(男児8名、女児7名)の健常児と、課題初回施行時年齢でCA5;2から6;1の言語発達遅滞児男児4名であった。絵画配列の正答率、発話についてはa)文法的複雑さ、b)言語的の内容の豊富さ、c)接続表現、d)発話の適切さの4つの観点から検討を行った。その結果、健常児群については、配列正答率と発話の言語的内容の豊富さ、また、配列正答率と発話の統語的指標であるMLUとの間に相関が認められた。その一方で、配列正答率に対してCA、VAのいずれも相関関係は認められず、年齢や単なる理解語彙数は順序性判断とは明らかな対応がないことが明らかになった。連続性表現については、「て・で」が3歳代、4歳代とも最も高頻度で出現していたが、5歳児で使用頻度の高かった接続詞「そして」は3歳代では使用されず、4歳代で接続助詞「て、と、たら」に次いで4番目の使用頻度であった。この接続詞・接続助詞等の使用頻度については内容語数との間に高い相関が認められた。一方遅滞児群ではCAに比して内容語が乏しく、3-4歳代の健常児群に近いことが示された。また、接続表現の使用頻度も低い傾向が明らかになった。さらに、すべての言語発達遅滞児で1)名詞、動詞、形容詞等の誤用、2)助詞、助動詞の誤用、3)因果関係・連続性の不適切な説明の3種のうち、いずれかまたは複数の不適切さを示しており、本課題は、発達障害児の統語的側面を評価するのに有効な方法であることが示された。
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[Publications] Otomo,K.: "Maternal responses to word approximations in Japanese children's transition to language"Journal of Child Language. (印刷中). (2001)
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[Publications] 大伴潔: "健常児と言語発達遅滞児における接続表現の発達"東京学芸大学特殊教育研究施設研究年報. 2000. 1-8 (2000)