1999 Fiscal Year Annual Research Report
高齢者の在宅介護者に対するソーシャルサポート介入に関する基礎研究
Project/Area Number |
10610119
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
田中 宏二 岡山大学, 教育学部, 教授 (00087983)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 共子 岡山大学, 文学部, 助教授 (40227153)
|
Keywords | 在宅介護者 / 精神的健康 / 認知的成長段階 / 続柄 / サポートネットワーク / 負担感 / 燃え尽き / コーピング |
Research Abstract |
本年度は、介護者の精神的健康の実態と問題点を明らかにする為に、在宅介護者551名を対象に調査を行った。258名の有効回答をもとに、多岐にわたる分析を行い、4件の学会報告(アジア社会心理学会:1件,日本心理学会:1件,日本健康心理学会:2件)を行い、現在、これらについて学会誌論文を執筆中である。 まず日本心理学会では、主介護者の認知的成長段階を3群(未受容・移行・受容)に分類し、諸変数との関連についての分析結果を報告した。背景変数においては痴呆度と介護者会への入会年数で、媒介変数では一部のサポートと総てのコーピングにおいて、3群の間に有意な差が認められた。またストレス反応は、認知的成長段階と共に変化することが示唆された。 次に、日本健康心理学会の第1報では、主介護者の続柄による介護状況や精神的健康の差異と、主介護者の精神的健康に関する背景・緩和要因の影響について報告した。介護者が子供や嫁である場合、配偶者に比べ年齢も比較的若く、介護年数は短いにも拘わらず、負担感はよりも高くなることが判った。また、痴呆度が高い場合に負担感が増大するのに対し、「介護者の会」への入会年数は負担感を軽減する効果をもつ可能性が示唆された。 日本健康心理学会の第2報では、主介護者のネットワーク特性に注目した。しかしながら、続柄によるサポートの量・質への有意差は認められなかった。サポート供給源は、サポートの種類によって分化の傾向が認められることや、子供・嫁は同居家族に偏りがちなのに対し、配偶者は別居家族からのサポートも多いことが判った。また、公的サポートの利用回数や満足度は負担感や燃え尽き感の一部の軽減に影響し、公的サポートの重要性が示唆された。 以上の結果から、特に注目されたのは「介護者の会」が精神的健康に及ぼす効果であった。しかしながら、本年度の調査では入会年数しか尋ねていなかった為、さらに「介護者の会」に関する具体的な内容調査を、現在行っているところである。今後、セルフヘルプグループのサポート効果と共に、介護者のニーズを明らかにしていく予定である。
|