Research Abstract |
2年計画の1年目である本年度は,小学校3〜5年の5学級(児童数計166名)を,担任教師が勇気づけを継続的に2ヶ月間実践する実験学級(3学級)と,そうした介入を一切行わない統制学級に分け,事前,実践中,および事後の児童の学級適応や学級集団過程の測定を行った。さらに,事前の測定で学級適応度,ソシオメトリック地位や教師期待認知の低い児童を9名抽出し,個別面接や観察を通じて彼らの変容過程を追跡した。なお,実験学級の教師には事前に,勇気づけのインストラクター有資格者による訓練を9セッション(計18時間)行った。 学級適応などの分析は,本来は学級単位のデータを用いるべきであるが,現時点では標本数が少ない。そこで本報告では個々の児童のデータを用い,条件(実験学級vs.統制学級)×測定時期(事前vs.実践中vs.事後)の分散分析を行った。 その結果,「教師期待認知」において交互作用が有意であり(F=3.04,df=2/296,p<.05),下位検定を行ったところ,実験学級の方が統制学級より事後の得点が有意に高かった。また,学級適応の下位尺度の「教師への態度」も交互作用が有意であり(F=5.48,df=2/296,p<.01),実践中と事後において実験学級の方が得点が有意に高く,また統制学級では事前より事後の方が有意に低くなっていた。これ以外の測度では有意な交互作用は見出されなかった。なお,抽出児の面接と行動観察の結果も,上記と同様の傾向が認められている。 以上の結果から,教師の勇気づけは,児童一人ひとりの学級適応を肯定的に変容させると考えられる。特に,対教師関係の改善や発展を促進するといえよう。勇気づけには,児童をありのまま受け入れ,彼らの努力や進歩を認め,自主性・自立性を支援する態度が求められる。本研究は研究半ばの段階ではあるが,教師のこうした態度と行動が学級改善に極めて有効であることが示唆される。
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