2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10610130
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
神園 幸郎 琉球大学, 教育学部, 教授 (70149334)
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Keywords | 自閉症 / 愛着 / コミュニケーション / 情動 / 鏡像 |
Research Abstract |
前年度までの研究によって、自閉症児のコミュニケーションについて次に示すようなことが明らかになった。すなわち、1)自閉症児のコミュニケーションは、相手となる特定の他者との関係性によってその質的様相が決定される。しかも、特定の他者との二者関係で形成されたコミュニケーション・スキルはその関係だけに閉じており、それ以外の他者との関係に波及しない。2)この自閉症児における関係特殊的な対人関係は、親もしくは特定の他者との関係で得られる快の情動の共有体験を契機として生起した。さらに、一旦形成された関係性は排他的な特性を帯び、それまでに保持されてきた親もしくは特定の他者との関係は逆に減退もしくは消失した。以上の知見から、自閉症児における関係特殊的なコミュニケーションの特性は、彼らの特異な対人関係の形成過程を反映していることが明らかになった。そこで、本年度はこれまで追跡してきた対象児とその親の事例について、親子関係の変遷と対象児の鏡像反応との関連性を検討した。親子の自由遊び場面において、対象児が親の情動状態を感知できるようになり、なおかつ自己の情動についても意識化できるようになると、親子の相互作用が急速に増加し、親子の共同遊びが成立するようなった。ちょうど、この時期と重なるように本児の鏡像反応が急増した。しかも、この時期に出現する鏡像反応は、以前に出現していた身体の連動性を楽しむといったものではなく、自ら意図して再現した喜怒哀楽の表情への注目であった。これらの結果から、本児の鏡像反応が、自己および他者の内的状態の覚知を基盤とする親子の関係性を如実に表していることが明らかになった。自閉症児の鏡像反応は、自他の理解およびそれに基づく社会性の様相を把握する上で有効な手段となりうるものと思われる。
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