1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10610156
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鹿又 伸夫 北海道大学, 文学部, 助教授 (30204598)
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Keywords | 裁判官経歴 / 昇進格差 / 官僚制 / トーナメント型移動 / 質的比較分析 / 経歴データ |
Research Abstract |
本研究では、裁判官経歴データの分析から、以下のような仮説を検証することを研究課題とした。(1)卒業大学によって昇進に差がある。(2)出向経験は昇進に有利になる。(3)支部勤務の経験は昇進に不利になる。(4)行政・企業側に不利な判決に関与すると昇進が不利になる。(5)裁判官の昇進は官僚制的トーナメント型移動である。平成10年度には、法曹関係者や法社会学者の数名にたいして別個に聴き取り調査をおこなった。その結果は、上記諸仮説に支持的な意見もあったが、必ずしも明確に断定できないとの所見もあり、仮説にたいする統計的分析による検証の必要がいっそう増大した。 平成10年度のもう1つの課題は、コンピュータによって統計的分析をおこなうための裁判官経歴データファイルを作成に入力することであった。その原データである『全裁判官経歴総覧』の改訂版が平成10年に出版されデータ内容が一新されたため、データファイル作成に遅れが生じた。そのため、裁判官経歴データの統計的分析に着手できなかった。 他方で、統計的分析手法にかんする検討も進めた。質的比較分析法としてのQCAは適用できることを確認した。しかし、統計的分析手法をもちいる場合、ロジスティック回帰分析とイベントヒストリー分析のいずれが適するのかという問題が新たな検討課題となった。イベントヒストリー分析は経歴データを前提としているが、ロジスティック回帰分析にはそうした前提はなく、この相違がたがいに矛盾した分析結果をもたらすことがある。この統計的分析手法の選択の問題は、平成11年度に継続して検討する。
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