1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10610156
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鹿又 伸夫 北海道大学, 文学部, 助教授 (30204598)
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Keywords | 裁判官経歴 / 昇進格差 / 官僚制 / トーナメント型移動 / 質的比較分析 / 経歴データ |
Research Abstract |
平成11年度は、昨年度に引き続き法曹関係者や法社会学者にたいして聴き取り調査をおこないながら、労働事件にかかわった裁判官の経歴パターンのデータ分析を進めた。データ分析は、経歴データにブール代数分析をもちいた質的比較分析をおこなった。データには、まだ昇進しきっていない若年層も含まれるので、裁判官任用期を第5〜7期、第8〜10期、第11〜13期にわけ、昭和63年時点で満53歳以上を対象とした。昇進は地方裁判所所長または高等裁判所総括判事の経歴とした。また、労働事件の判決は、労働側有利、当局(行政・企業)側有利、混合型判決に3分類した。 第5〜7期では、昭和63年時点でほとんどが昇進しきっており、そのほとんどが「出向または支部勤務」そして「地裁総括・高裁判事」の後に昇進するパターンであった。第8〜10期では、昇進格差が現れており、最高裁事務局や法務省への出向が、支部勤務よりも昇進を確実にする条件であった。第11〜13期は、昇進するものがまだ少なく、当局側有利判決にかかわることと、支部勤務と出向の双方をおこなうことが昇進を早める傾向があった。 データ分析から、(1)出向経験は昇進を確実にして早める、(2)当局側に有利な判決に関与すると昇進が促進される、などの傾向があらわれた。 データ分析を進める中で、定年以前で退職する者が多いことがわかった。これは、途中退職者の経歴を検討し、途中退職しなかった者と比較する必要があることを示している。また、出向や支部勤務の勤務年数などの量的側面も検討すべき課題として残された。これらは平成12年度の課題とする。
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