1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10610170
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
笹原 恵 静岡大学, 情報学部, 講師 (40237813)
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Keywords | 農民女性 / 女性労働 / 女性労働者 / ジェンダー / 性別職務分離 / パート労働者 / 家事労働 / 司法構造 |
Research Abstract |
本年度は、長野県と岩手県の2つのフィールド調査を予定していたが、様々な理由から今年は主に長野県のフィールド調査に絞った。主な研究実績は以下の3点に要約される。 (1)本研究年度8〜9月にかけて、研究代表者と雇用した調査員が現地に赴き、かねてから継続中の長野県の中堅企業「(株)A警報機」(仮名)で働くパートの女性労働者へのインタビュー調査を実施し、退職者を交えた大半の聞き取りを終了した。調査項目は、職場・農業・家事労働における性別職務分離の状況、資金の家計への寄与、家計構造、女性労働者の労働歴、家族歴、生活時間等であり、個別の労働者のケーススタディはほぼ完了した。 (2)現在、東京高裁で進行中である「パート差別訴訟」については、和解交渉の現況についてのヒアリングと平行して関連する集会に出席してきたが、当該研究年度の11月29日に和解が成立した(1999年)。裁判は、構造不況の中で、非正規労働者(農家の女性労働力を含む)をいかに安価で使い捨て可能な労働力として留め置きつつ戦力化するかという資本の論理と、女性労働力の価値評価を訴える女性労働者の論理がぶつかりあう場であったが、裁判所は、原告代理人(弁護士)の積極的な議論に耳を傾け、女性の非正規労働者と正規労働者間の労働条件や賃金格差を撤廃すべきであるという論理での和解を成立させた。 (3)(2)に関連するが、司法構造自体の分析をすすめるため、傍聴を主とする裁判についての調査研究や法社会学の関連資料を収集し、司法における各アクターの役割や具体的な審議の進め方などについての考察を深めた。裁判といっても民事、刑事ではだいぶ様相が異なるが、いずれにせよ、裁判官や弁護士(検察官)のイデオロギー性、あるいはジェンダー意識が、判決・和解に深く関連している。なお、この分析視角は、また別の形で「日本の司法構造」の分析につなげていきたい。
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