1999 Fiscal Year Annual Research Report
社会学と「生の哲学」の思想的・理論的連関に関する研究
Project/Area Number |
10610177
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
嘉目 克彦 大分大学, 経済学部, 教授 (50117412)
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Keywords | 価値実現過程 / 生の諸力 / 愛の秩序 / 実存 |
Research Abstract |
M.ヴェーバーは、「行為」を歴史哲学的な観点から「価値の実現過程」と定義づけ、行為と「生」に「形(Form)」を与えるのは価値の「内的固有法則性」だと考えていたが、これと同種の想定をしていたのはM.シェーラーとK.ヤスパースである。 (1)シェーラーの場合、「人格」はその「行為」において「愛の秩序」の価値実現過程を担う「道徳的主体」として定義される。「価値」への「愛」、すなわち「価値感情」と価値関心が人格と歴史のいわば規定根拠である。同時にまた、価値実現過程それ自体が「道徳的価値」として、他の諸価値(聖価値を除く)の上位に置かれる。これは、価値実現は善(悪)である、との倫理的世界観に結び付く考え方だと思われる。博愛主義、価値主観主義、労働価値主義及び有用価値主義のすべてを近代の「価値の転倒」とみるシェーラーの近代分化批判は、隣人愛の倫理的立場に立つものであろう。 (2)ヤスパースの場合は、ヴェーバーのいう「生の諸力」が「実存」に規定的に作用する「符牒(Ziffer)」として理解され、-ザーナーもいうように-特定の思想及び行為における符牒を見極めることが哲学の重要な課題のひとつとされている。この諸力は、ヴェーバーの場合と同様に、いわば実存の前で支配力を競い合い、実存の内部においても葛藤を繰り広げる。だが、ヴェーバーの場合はこの諸力が「デーモン」「神」あるいは「価値」と同視されているのに対して、ヤスパースにおいてこれはあくまで符牒であり、普遍性を持たないように思える。この符牒は、それゆえ「社会性」(ヴェーバーではVergemeinschaftungおよびVergesel Ischaftung)の問題地平への射程が遮断されているように見える。
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[Publications] 嘉目 克彦: "ヴェーバーと20世紀社会学"社会学史研究. 22号. (2000)
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[Publications] 嘉目・三隈 編著: "理論社会学の現在"ミネルヴァ書房. (2000)
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[Publications] 矢野・橋本・橋本 編著: "マックス・ヴェーバーと近代日本(仮題)"未来社. (2000)