2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10610186
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Research Institution | RIKKYO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
坂田 周一 立教大学, コミュニティ福祉学部, 教授 (20133473)
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Keywords | 社会福祉 / 自治体 / 財政 / 地域的公正 / 福祉計画 |
Research Abstract |
福祉サービスの地域格差を示す研究では、住民一人当たりの福祉予算額とか福祉サービス提供量のような指標を使って著しい地域格差のあることが指摘されている。そして、それらの研究では、原因として財政的要因を指摘するものが多い。地方自治を重視すれば、自治体ごとに福祉水準の差があるのはあたり前、といって済ませられる問題とは言いかねる。同じ国民なのに、住んでいる場所がたまたま違うからといって、人権の実現の程度が違うのはやはり変である。 しかし、イギリスの福祉政策学者ブレディン・ディビスが提起したテリトリアル・ジャスティス(地域的公正)の考え方からみると、この問題は単純ではない。福祉ニーズは地域の社会経済的特性や人口構成等の違いの影響を受けるはずだから、人口規模が等しくても福祉ニーズの大きさは地域ごとに異なるだろう。一人当たりの指標は地域のニースの違いを織り込んでいない点で適切でなく、むしろ、地域ニーズを公平に取り扱えば当然の結果として一人当たり指標では地域差が発生するのである。 これは、福祉サービスの供給水準を評価するには地域のニーズを測定しそれと比較しなければならないという考え方であり、福祉の計画化を求めるものである。これまでの予算は、地域にどんなニーズがあるかはお構いなく、過去の仕事を積み上げるような編成のされ方をしてきたから、ニーズに基づく予算というのは革新的考え方である。計画は法律や予算と並ぶ計画の重要な表現形式であり、我が国でも近年非常に重視されるようになってきた。
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