2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10610189
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Research Institution | Tsuda College |
Principal Investigator |
小倉 充夫 津田塾大学, 学芸学部, 教授 (40055322)
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Keywords | 農村・都市間移動 / 都市化 / 国際労働移動 / 構造調整政策 / 民主化 / ザンビア / 南アフリカ / 南部 |
Research Abstract |
冷戦の終焉と南アフリカのアパルトヘイトの崩壊はこの地域の発展に明るい展望を抱かせた。しかし90年代末に明らかになったのは楽観論ではすまない問題の複雑さであった。高い失業率・犯罪など社会問題の深刻化ばかりでなく、この地域の国境を越えた諸関係の発展により生ずる不法移民の増大などの問題をかかえ、南部アフリカは一つの地域としての取り組みをますます必要としてきている。 こうした背景のもと、ザンビアを中心に構造変動による人の移動、および民主化の動向について分析した。経済危機、さらに構造調整政策の実施の結果、都市の生活水準は下降し、就業機会は縮小した。それにより農村から都市への移動より、むしろ都市から農村への帰還が増大した。帰還者は出身村へ戻るよりも、むしろ他村や地方中・小都市へ行く傾向がある。このことは従来の大都市を中心とした人口集中と都市化とは異なる状況を生み出しつつあるといえる。 なお南部アフリカ諸国間協力の発展がみられるかたわら、国境地帯の人々の活動も活発化している。市場経済化の進展と和平の到来、そして経済危機による地方の貧困化の中で、国境を越えた交易などが盛んになってきており、このことが国家とは何か、国民とは何かという問題に影響を及ぼしていることに注目する必要がある。 1991年の政権交代に示されたザンビアの民主化はモデル的なケースであった。しかし以来10年の間、さまざまな課題が明らかになってきた。出生地主義をとらないザンビアは国籍が選挙において争点となるようになった。このことは本来国民とは何かという課題を負わされてきたアフリカの国が、民主化にともなって新たに抱える問題となっている。
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Research Products
(2 results)