1999 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカ社会における「共産社会」思想興隆の社会・歴史的背景に関する研究
Project/Area Number |
10610197
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
和田 修一 早稲田大学, 文学部, 教授 (30106215)
|
Keywords | コミュニタリアニズム / 自由主義 / 個人主義 / コミュニティ / アメリカ社会 / パターナリズム / 倫理規範 / 社会道徳 |
Research Abstract |
アメリカにおいて「共産社会」思想(コミュニタリアニズム)が広い範囲で唱えられるようになったのは、1980年代である。本研究では、「何故この時期に」「アメリカ社会において」その思想が広範囲の唱導者を見出すに至ったのか、このことの社会的・歴史的背景を明らかにすることを目指した。コミュニタリアニズムには、哲学的理論としてのコミュニタリアニズム(J.ロールズに代表される自由主義の批判理論)と社会思想としてのコミュニタリアニズム(大衆的なpopularコミュニタリアニズムと呼ばれる)があり、両者は密接な関連を有しているが、本研究が研究の対象としたのは後者である。 社会的イデオロギーとしてのコミュニタリアニズムの特性のひとつは、今日のアメリカ社会が呈している病理現象が従前のアメリカ社会の構成原理のなかに含まれていた「コミュニティ的」原理が失われ、個々のアメリカ市民があまりにも個人主義化しているという点にその原因を求めるという認識様式にある。その意味で、コミュニタリアニズムは「後ろ向きの」(looking backward)思想であるという特徴を有していることも事実であり、その点を批判する論者も存するのである。大衆的コミィニタリアニズムの旗手のひとりであるR.ベラー教授もまた、インタヴューのなかで、ニュー・ディール時代のアメリカ社会の備えていた健全な社会構成原理が失われてしまったことを重大な問題として指摘されたのである。こういったコミュニタリアニズムの指摘は、アメリカ社会が20世紀という後期近代という時代において辿った社会変動の構造特性と連動しているのであり、その社会変動の在り方を律する原理は日本を始めとした自由主義社会の構造変動を予見する一般的なものであると思われるのである。
|