1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10610205
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
満田 久義 佛教大学, 社会学部, 教授 (60131306)
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Keywords | 環境主義 / 持続可能性 / ナショナル・トラスト / 知床 |
Research Abstract |
本研究は、環境社会学の新たな理論構築のために、近代産業国家における環境主義の構造を国際比較の視点から明らかにすることを主たる目的としている。とくに本研究では、環境主義を一般的な定義である環境運動に加えて、環境保護に関する社会的価値や倫理、環境世論、環境政策、環境行政制度、環境NGOの環境戦略など環境問題や環境思想に関わる統合的な社会的ベクトルととらえ、グローバル化する環境主義を、先進国それぞれの歴史的・文化的・社会的背景との関連で比較分析している。とりわけ先進国での環境運動の成立、発展、衰退過程における共通性と異質性を比較分析することで、エコロジカル転換(Ecological Switchover)と名づけうる近代産業社会の発展段階に応じた共通した環境事象と社会現象を明らかにし、よりラディカルでエコロジカルな方向性を解明している。 平成10年度は、日本ナショナルトラストを事例として取り上げ、その環境運動の歴史的展開に関する文献研究と調査研究をおこなった。とくに知床ナショナルトラスト運動の20年間の運動理念の変遷と活動の変化を、資料解析/ウトロ住民365戸の意識調査/関係者へのインタビューを用いて研究した。その結果、同運動の持続可能性には、地域住民の主体的参加や一般国民の支援のほか、行政やマスコミの対応が大きく影響していることが実証された。また、自然との共生を可能にするためには、社会集団間の相互理解と協調が不可欠なこともあきらかになった。今後、さらなる調査結果の分析を行う必要性が認められた。
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