1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10610220
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Research Institution | Shiga Bunka College |
Principal Investigator |
小川 賢治 滋賀文化短期大学, 生活文化学科, 教授 (80231223)
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Keywords | 栄典制度 / 君主制度 / 貴族制度 |
Research Abstract |
1. ブリティッシュ・ライブラリーにおいて、イギリスの栄典制度と、それに関連して、君主制度に関する文献を多数閲覧した。その結果、次の点を知ることが出来た。 近年、王族の不祥事、特に皇太子夫妻の離婚によって、イギリス国民の王室への支持は揺らいでいるが、王室を支持する人々は依然として少なからず存在している。ただ、彼らといえども、王室が世論の支持を得て生き延びていくためには、今後大胆な改革が必要だという点では意見は一致している。他方、王室否定論の大きな根拠の一つは、今後のイギリスにとって王室は存在意義を持たない、有用でない、というものである。 2. イギリスの栄典制度について研究を進めるのと並行して、それと比較するために、日本の栄典制度について、より正確には、日本の貴族の歴史に見られる栄典の意味について、考察を加えた。その概略は次の通りである。 貴族の地位は元来、天皇に対する貢献の報賞であり、また、貴族は天皇と同じ社会階層的基盤の上に存在しているので、貴族の存立にとって天皇の存在は不可欠である。そのような天皇を貴族は支持し、その一方で、彼の威信を自己の権威づけに利用する。貴族の地位と特権に正当性を付与するものの一つは系譜であり、それは天皇の系譜と結び付くものであれば一層望ましい。また系譜は捏造される場合がある。貴族層は、時代の変化とともに、新しい有力階層を自分たちの同盟者に組み込んで自己を再編成し、それによって時代を生き延びようとする。現代のような民主主義の時代においても、地位と栄誉を求める人々が存在することには変わりがなく、一部の権力者は、自分の地位を堅固にするために、栄典を利用しようとする。
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