2001 Fiscal Year Annual Research Report
地方分権改革下における地方の教育行政改革の取組みとその規定要因に関する調査研究
Project/Area Number |
10610233
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小川 正人 東京大学, 大学院・教育学研究科, 教授 (20177140)
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Keywords | 戦後教育行政 / 地方分権改革 / 教育行政改革 / 地教行法体制 / 教育政策過程 / 新制度論 / ネットワーク論 / 政策共同体 |
Research Abstract |
本年度は、本科研費執行の最終年度であったこともあり、これまでの研究作業と成果をまとめながら今後の研究展開を図る研究方法上の検討にとりくんだ。 1)過去3年間の各種調査研究から、国の分権改革の諸方策に対して都道府県教育委員会と市町村教育委員会の間で、又、教育委員会間でも評価と対応の差異が見られた。特に、今次の分権改革を評価し独自の教育行政施策を試み始めている多くの教育委員会では、首長の教育行政への積極的な関わりやリーダーシップが強く関係していることが明らかとなった。こうした事実から、なぜ、今次の分権改革によって、急速に、教育行政に対し発言しリーダーシップを発揮する自治体首長が多く誕生することになったのか-逆から言えば、これまで自治体首長が教育行政にリーダシップを発揮できなかったのは何故か、また、分権改革による法制度の変化は、そうした首長の新たな行動に見られるような自治体内部における他の主要な政策アクター(議会・議員、教育委員会、住民、等)の行動や影響力をどう変えることになるのか等、法制度の改正と自治体内部の政策過程の変容の関係等を明らかにしていく新たな課題を浮き彫りにさせた。 2)分権改革によって、国基準の弾力化・大綱化や事務の簡素化などが実施されたが、それ以前から、法制度の運用面で自治体の裁量的な工夫が様々に試みられていたり、自治体間で異なる多様な対応がなされていることが明らかとなった(学校施設・設備や教職員配置・加配等)。分権改革は、いわば、そうしたある種先行していた法制度の弾力的な運用や工夫を顕在化させた面もあり、今次の分権改革による法制度改革の意味と評価を、実際の政策・執行過程といった動態で検証することの重要性を自覚化させられた。 3)以上のような検討は、今次の分権改革は、戦後教育行財政の法制度の構造と特質をどう変えるものなのか(或いは変えないのか)を歴史的にも検証していくことを要請している。その際、特に、「地教行法」体制といわれた1956年地教行法の下における教育行財政制度の構造とその運用実態を明らかにしながら、自治体の政策過程の実際とその特徴を析出することが不可欠であり、これら作業は、今次の分権改革による教育行財政制度改革と地方自治体の教育政策過程に関する研究にとって不可欠で基礎的である。
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[Publications] 小川正人: "戦後教育行財政制度の構造・特質と教育政策過程に関する研究II-教育行政研究における教育政策過程研究レビューと課題設定-"東京大学大学院教育学研究科教育行政学研究室紀要. 第21号. (2002)
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[Publications] 小川正人: "地方分権と学校教育"学校運営. 477号. 6-8 (2001)
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[Publications] 小川正人: "自治体の予算編成と教育財政-地域づく作りと住民参加型の(教育)予算編成-"講座 現代教育法第3巻『自治・分権と教育法』. 201-212 (2001)
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[Publications] 小川正人: "教育助成と学校選択"現代のエスプリ. 406号. 85-95 (2001)
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[Publications] 小川正人: "地方分権の改革と教育"教育評論. 648号. 14-16 (2001)
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[Publications] 小川正人, 最首輝夫: "地方教育委員会からの挑戦 子どもと歩む市川市の教育改革"ぎょうせい. 281 (2001)