2000 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツ近代社会の学区編成にともなう文化変容と社会的規律化の実証的研究
Project/Area Number |
10610240
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Research Institution | Joetsu University of Education |
Principal Investigator |
増井 三夫 上越教育大学, 副学長 (30099387)
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Keywords | 農村共同体の自立性Eigenstandigkeit / 農村共同体の公共性Oeffentlichkeit / 農村共同体の意志形成Willennsbildung / 州議会Proviziallandtag |
Research Abstract |
第1の作業は、方法論の検討を継続することである。19世紀において、伝統的な教区・学区の規律が動揺し、ここに新たな住民の日常的な行為を規制するポリツァイ概念と装置が登場するという最新の研究成果がR.Jessennによって示されている。これに対してR.v.Friedeburgは、農村共同体の意志形成Willennsbildungに注目し、国家(お上)に対する自立性Eigenstandigkeitの機能を明らかにしている。Friedeburgは、国家(お上)と農村共同体が対峙する場である集会に注目し、この機能に18、19世紀において形成された公共性Oeffentlichkeitの価値と理念を見い出し、「下からの参加型の自治のモデル」として捉えようとしている。 ここで問題となるのは、農村共同体の意志形成Willennsbildungが公共性の場で如何にして形成されるのか、そしてその分析の方法と検証の方法である。農村共同体が教区・学区という行政的枠組みに編成される19世紀において、教区・学区が国家(お上)に対する自立性Eigenstandigkeitの機能を如何にして持ちうるか、その形態を含めた考察は、公共性に関する上段の研究課題に正面から関わらざるを得ない。 ここで想定される概観図は、教区・学区が公共性を機能的に有することによって、国家(お上)に対して自立的な関係を整え、同時に関わることによって、教区・学区住民の文化変容と自前の規律化が進行するのではないか、ということである。 第2の作業は、後段の想定図の予備的な検証を行うことである。すでにプロイセン州議会議事録の検討を完了しており、現在ヴェストファーレン州議会議事録の分析を進めている。前者については上記の想定図がかなり典型的なかたちで見えたが、後者においてもその傾向が顕著である。更にライン州議会議事録の考察を加え、比較する必要がある。
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