1998 Fiscal Year Annual Research Report
近世城中教育の比較制度史的研究・・・・・加賀藩前田家を中心に・・・・・
Project/Area Number |
10610245
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
高木 靖文 名古屋大学, 教育学部, 教授 (30097729)
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Keywords | 城中規式 / 奥と表 / 大名の教育 / 近習の教養 |
Research Abstract |
本研究は、近世武家社会の教育文化を手がかりとして、その発達経緯と近代的素地の形成過程を解明しようとするものであり、支藩・分家も含めた大名「家」の奥向き慣行・制度の解明、藩主や家族の学問傾向、城中(および領内)における直接・間接の影響、教育制度成立との関わり、などを全体的・実証的に解明し、他の大名家の実情と比較検討するものである。 本年度は、当該研究における3ヶ年計画の初年度に当たり、(1)城中規式・職務上の慣行、(2)藩の官制、(3)奥向きの生活と学問実態などについて、主として関係史料・文献の調査・収集と整理を行った。以下、研究の進捗状況とテーマに関わる見通しの一部を記す。 調査研究の対象は、加賀藩前田家とその家中および縁戚として影響関係の予想される富山藩前田家とし、「加越能文庫」(金沢市立玉川図書館蔵)・「河野家文書」(同)・「前田家文庫」(富山県立図書館蔵)所収の関係文書を収集した。加賀藩・富山藩ともに、藩主に近侍した諸役の役務日誌、私的備忘録によって奥における藩主や家族の動静、学問教育の実態、それらに関わる職務上の規式・慣行を検討した。とくに、江戸上屋敷での様子も併せて調査し、国元との比較を試みた。 以上の調査研究の結果、いくつかの点が明らかになった。すなわち、(1)「奥」と「表」の空間的・社会的区別と、秩序を維持するための規式・慣行は両家ともに厳然と存在したこと。(2)近習役・小将役など、藩主やその家族を取り巻く者たちには、学問教育の相伴者として相当の教養が要求されたこと。(3)そのために、私的教育の機会が求められ、やがて家中「外様」との厳格な区別を原則として、藩校教育などを関係づけていったこと。などであり、今後史料に即した精緻な実態研究を進める予定である。
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