2000 Fiscal Year Annual Research Report
近世城中教育における比較制度史的研究・・・加賀藩前田家を中心に
Project/Area Number |
10610245
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
高木 靖文 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 教授 (30097729)
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Keywords | 城中教育 / 奥と表 / 大名好学 / 近習の教養 |
Research Abstract |
本研究は、近世武家社会の教育文化を手がかりとして、その発達経緯と近代的素地の形成過程を解明しようとするものであり、支藩・分家も含めた大名「家」の奥向き慣行・制度の解明、藩主や家族の学問傾向、城中(および領内)における直接・間接の影響、教育制度の成立との関わり、などを全体的・実証的に解明し、大名家相互の実情の比較検討をめざすものである。 本年度は、当該研究における3ヶ年計画の最終年度に当たり、加賀藩、富山藩、大聖寺藩などの(1)城中規式・職務上の慣行、(2)藩の官制、(3)奥向きの生活と学問教育などについて、関係史料・文献の調査・収集と整理を継続し、加えて表向きの学問教育の機会である藩立学校との関わりについて多角的に検討した。以下、研究の成果および展望について概要を記す(なお、詳しくは別冊「報告書」を参照のこと)。 3カ年の調査研究の結果、明らかになった点は以下の通りである。すなわち、(1)「奥」と「表」の空間的・社会的区別と、秩序を維持するための規式・慣行は三藩(前田家)いずれにも厳然と存在したこと。(2)その中で、藩主やその子弟の学問教育が行われ、定式化し、多様な形態が確立したこと。(3)近習役・小将役など、側近の者たちには、学問教育の相伴者として相当の教養が要求されたこと。(4)そのために、「宅会読」などの私的教育の機会が成立し、やがて家中「外様」との厳格な区別を原則として、藩校教育などが利用されるに至ったことなどである。(5)また、城中の教育は藩主の居宅である二之丸に止まらず、子弟や隠居者の居宅である諸屋敷でも自発的に行われたことも明らかになった。すなわち、藩主の好学が学問教育興隆の契機になるとういうより、好学の藩主を生み出す文化的状況が城中に形成され、学習環境として存在したことが注目されるのである。 このような文化的環境の人間形成的機能を、実態に即して明らかにすることが、今後の歴史研究においては極めて重要であると考えられる。
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Research Products
(1 results)