1998 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカ新教育運動における個別化・個性化の教育実践と個性概念の変容
Project/Area Number |
10610255
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Research Institution | Hyogo University of Teacher Education |
Principal Investigator |
宮本 健市郎 兵庫教育大学, 学校教育学部, 助教授 (50229887)
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Keywords | 個別化・個性化 / アメリカ合衆国 / 新教育運動 / ドルトン・プラン / ウィネトカ・プラン / フレデリック・リスター・バーク / 個性 |
Research Abstract |
本年度に行なった研究の内容は、以下の3つである。 第一は、20世紀初頭のアメリカ合衆国における個性概念の整理である。当時の「個性」にはふたつの意味があることが確認できた。ひとつは、個人の主体性や自発性を強調する場合で、個性の機能を重視した概念であるといえる。もうひとつは、個性を実体としてとらえ、個性が個人差や適性とほとんど同じ意味に用いられる場合である。教育の個別化・個性化(individualization)の具体的な方法は、このいずれの意味を強調するかで全くことなるものとなる。初期には、前者の意味を強調した実践が多く、その代表はフレデリック・リスター・バークの教育実践であった。これには、児童研究の影響が強く反映していた。1920年代以後になると、後者の意味を強調した実践が増えてくる。知能テストや標準テストの普及とともに、知能や学力を実体としてとらえ、その個人差に応じた教育実践が模索されていたのである。 第二は、個別教授の重要な起源のひとつであるフレデリック・バークの教育実践に関する研究と発表である。1998年夏には、バークが初代の学長をつとめたサンフランシスコ州立大学で、この研究を発表したサンタ・バーバラの幼稚園、およびサンフランシスコ州立師範学校付属小学校でのバークの実践は、子どもの自発的な活動と思考を最大限に発揮させるための方法であった。自発性の保障のための環境整備に主眼があった。 第三は、バークの教育実践を継承し、発展させたドルトン・プランおよびウィネトカ・プランに関する資料収集と研究発表である。ドルトン・プランでも、1920年以前では、自発性が強調されていたことが明らかになった。しかし、1920年以後、イギリスや日本などに普及したドルトン・プランでは、個人差を個性ととらえ、個人差に応じた教育方法としての側面が強調されるようになったと考えられる。ウィネトカ・プランでは、この点はさらに強調されたようである。以上の点の論証が今後の課題となる。
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