1999 Fiscal Year Annual Research Report
帝制期ロシアのエリート教育システムと社会変動に関する総合的研究-身分制原理からメリットクラシーヘ-
Project/Area Number |
10610272
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
橋本 伸也 京都府立大学, 福祉社会学部, 助教授 (30212137)
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Keywords | ロシア / エリート教育 / 身分制原理 / 帝国システム / 民族教育 / 女子高等教育 / 高等教育 / 中等教育 |
Research Abstract |
表記研究の第二年度である今年度は、帝制期ロシアのエリート教育システムの変動過程について、前年度に引き続き検討を進めるとともに、当該テーマの検討のための理論的枠組みの再検討を行い、それらを通じて下記三点にわたる成果を得た。 (1)18世紀から19世紀前半いたるロシアの教育システムの基盤をなした「教育の身分制原理」に関して学説史的検討を行い、それらを踏まえたこの原理についての定義を試みた。あわせて、この原理に基づいて編成された当核時期の諸教育機関の概要について、従来示してきた水準を超えて、制度史的展開及び学生・生徒の社会的出自と進路をパラメータとした解析を試み、その実態をより詳細に解明することができた。この点については、論文「19世紀前半ロシアにおける教育の身分制原理とエリート学校」において明らかにした。 (2)教育システムの構造と機能を国制と関連づけて論じる場合、ロシアが西欧のような国民国家ではなくて「帝国」であったことを勘案しなければならない。その点を明らかにするために、帝制期ロシアの西部国境地域を取り上げて、当該地域が教育システム全般において占めた位置を明らかにした。あわせて、ロシアにおけるユダヤ人教育についても若干の検討を試みた。この点については教育史学会シンポジウムで報告するとともに、論文「帝国・身分・学校-帝制期ロシア教育社会史の試み-」として公表する。 (3)女子高等教育について、19世紀後半から第一次世界大戦以前に存在した学校の校種・規模・学生生活等について詳細な史料の入手に成功し、現在検討中である。あわせて、西欧諸国におけるロシア人留学生の規模と教育システム上の位置づけについても、とりわけロシアにおける女子高等教育の成立・拡大と関連づけて明らかにしつつある。これについては、来年度、単著書としてまとめる予定である。
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