1998 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀初頭のアメリカ合衆国の女子大学における教育理念・内容の変容の実証的研究
Project/Area Number |
10610281
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Research Institution | Soka University |
Principal Investigator |
坂本 辰朗 創価大学, 教育学部・教育学科, 教授 (60153912)
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Keywords | アメリカ大学史 / 女子大学 / ジェンダン / 19世紀 / 20世紀 / 教育理念 / カリキュラム |
Research Abstract |
セブン・シスターズ・カレッジの中でもっとも早くセミナリーとして発足した(1836年、翌年開校)にもかかわらずカレッジとしての昇格がもっとも遅れたマウント・ホリヨーク・カレッジ(1893年に完全なカレッジとしての設立認可状を取得、1912年にアメリカ女性大学人連盟ACAに加盟承認)においては、カレッジ昇格にあたって、(伝統的に男性大学のカリキュラムのシンボルであった)ラテン語・ギリシア語の重点化・必修化を重視したカリキュラム改革をおこなったが、これは、同時代の男性カレッジであるアマースト・カレッジや既に女性大学としての地歩を固めていたスミス・カレッジがハーバード大学に倣って古典語科目の軽減化・選択履修化を進めていったのに対して、過去を志向した時代遅れの改革であった。このようにマウント・ホリヨークの事例は、(男性大学という)公認された唯一のスタンダードの受け入れが、の囲い込みとそこからの排除(カレッジとしては認められたが亜流の地位に甘んじざるをえなかった)の同時進行としてあらわれるという改革のパラドックスの一例とみることができよう。さらに、カレッジへの移行はカリキュラムだけでなくエートスーーー宗教的な福音主義と規律ーーーの決定的な変容をももたらした。 マウント・ホリヨークでは、1910年代までに科学カリキュラムの改革を完了しその研究水準を国際的にまでに飛躍させたと同時に、異なったスタイルの科学研究を創りあげたことが指摘されているが、このような、「女性独自のカリキュラム」から「男性大学のそれをモデルにしたカリキュラム」から再び「女性独自のカリキュラム」へという論点は、これまでのカリキュラム史研究の中では見えてこなかったものであり、20世紀をさらに下って検討する必要がある。
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