1999 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀初頭のアメリカ合衆国の女子大学における教育理念・内容の変容の実証的研究
Project/Area Number |
10610281
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Research Institution | Soka University |
Principal Investigator |
坂本 辰朗 創価大学, 教育学部, 教授
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Keywords | アメリカ合衆国大学史 / 女性大学 / 教育理念 / カリキュラム / ジェンダー / 20世紀初頭 |
Research Abstract |
20世紀初頭の女性大学における教育理念・内容をめぐる論争は、基本的には、この時代のアメリカ合衆国大学史に現れた、社会的効用性(あるいは職業カリキュラムの導入)という観点からのリベラル・アーツ批判の一つの位相として捉えることが可能である。しかしながら、女性大学は以下に挙げる歴史的制約を抱えていたと考えられる。 まず、一方では、リベラル・アーツ・カリキュラムと女性の伝統的役割(Jane Roland Martinの言う「社会の再生産過程の遂行」)との矛盾への指摘とこの克服への試みが見られるものの、本研究でのケーススタディの対象とした大多数の女性大学では、社会的効用性をもった諸科目の大幅な導入といった改革には動いていない。これは、女性大学がつねに男性大学との比較においてみずからの位置を決定してきたのであり、そこでは、リベラル・アーツこそ"真の"大学のあかしであるという呪縛(たとえば、古典語を必修から外すという措置すら躊躇した)が働いていた。したがって、カリキュラム改革は独創性を欠いた(男性大学の)安易な模倣と見られる場合が多かった。 他方で、女性の伝統的役割ないしは女性性(femininity)への目配りと社会的効用性を統合させた"女性的"科目として、家政学や看護学などの諸科目が導入されていく。ただしその場合も、女性大学では、これらの諸科目導入を正当化する論理として、(1)女性にとっての「社会の再生産過程の遂行」に親和的なものと捉えるのか、(2)"女性的"プロフェッション(たとえば、公立学校における家庭科教師)への進出のためと捉えるのか、必ずしも明確ではなく、むしろアンビヴァレントであったと言えよう。それは、これらの諸科目とリベラル・アーツ諸科目とのカリキュラム上の位置づけにみてとることができる。
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