1999 Fiscal Year Annual Research Report
開発途上国向けの国際的教育援助プロジェクトの事例的研究-世界銀行の活動を中心に
Project/Area Number |
10610292
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Research Institution | National Institute for Educational Research |
Principal Investigator |
斉藤 泰雄 国立教育研究所, 国際研究・協力部, 室長 (30132690)
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Keywords | 教育援助 / 世界銀行 / 開発途上国 / ラテンアメリカ / 基礎教育 / 教育の質 / 国際援助 |
Research Abstract |
開発途上国向けの国際的教育援助の分野において世界銀行の実績と影響力はきわめて大きい。世銀は、教育開発のための資金の貸付において、世界最大の資金供給源となっているだけでなく、途上国の教育政策決定者に対する政策アドバイザー、知識・情報の提供者としても影響力を増している。本研究は、主にラテンアメリカ地域を中心として、世銀の展開している途上国向けの教育援助の政策と教育プロジェクトの事例を分析した。 1.1963年以降、世銀の教育分野での貸付承認案件は、世界の116カ国で合計610件のプロジェクトにのぼる。教育分野別にみると、かつては高等教育や職業訓練向けの比重が高かったが、最近では初等教育(基礎教育)分野を優先する傾向が見られる。資金配分でも、校舎の建築や施設設備のようなインフラの整備中心から、教科書の作成・配布、効果的な教員研修、教育評価方法の改善などソフト面へと重点をシフトさせている。 2.現在、ラ米地域5カ国で実施中の初等教育関連のプロジェクトには、次のような共通の特色が見られる。(1)教育の質の向上に重点を置き学習環境の整備を重視、(2)初等教育全体をサブセクターととらえ統合的なアプローチを志向、(3)教科書の作成・配布、学級文庫用の図書パッケージ支給、(4)教職員のための現職教育機会の拡大、(5)児童の学習成績をモニターする教育評価システムの導入、(6)社会的公正の観点から弱者グループ(貧しい農民、先住民、女性)の教育条件を改善する特別措置の導入。 3.ラ米地域向けの教育援助方針を示した戦略報告書によれば、今後の優先課題は、(1)学校から疎外されてきた人々への特別の配慮、(2)教育の質の向上、(3)学校から成人世界への移行の過程の改善、(4)教育の地方分権化の推進、(5)高等教育の多様化と改革、(6)新テクノロジーを利用した教育革新の促進、の六点にある。
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