1999 Fiscal Year Annual Research Report
米国小都市と周辺農場地域における自立・扶養の形態変化、親族関係及びエスニシティ
Project/Area Number |
10610303
|
Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
佐野 敏行 奈良女子大学, 生活環境学部, 助教授 (20196299)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐野 眞理子 広島大学, 総合科学部, 教授 (80206002)
|
Keywords | アメリカ文化社会 / 人口動態 / 移民 / 高齢者 / 自立と扶養 / エスニシティ / 小都市 / 文化人類学・民族誌 |
Research Abstract |
本研究は、高齢者の意義ある老後の形成の仕方と、その背後にある文化的体系の理解を目指した文化人類学的研究の一部である。本課題では、アメリカ中西部の小都市の一つとその周辺農場地帯を取り上げ、高齢者向けの公的なサーヴィスや財政支援政策が整備される以前の1850年から1910年にかけて、高齢者の日常生活がどのように彼らの扶養と自立と結びついて形成されていったかを、歴史的変化及び1980年代の民族誌資料、そしてエスニシティとの結びつきやジェンダー関係の関与の仕方を考慮しながら、解明することを目的としている。本年度の研究目標と知見は次の通りである。本研究の計画当初に挙げた「家族の移動(転居)」と自立・扶養の関係を明らかにするために、異なる年次で追跡可能な家族をまとめた結果、市内での転居は家族構成変化だけでなく、家長の年齢、財政的自立などと関連していることが明らかになった。また、確定困難な「女性の移動」の実態を旧姓に着目し埋葬慣行からみると、母娘間の密接さがアングロサクソン系で、ポーランド系よりも顕著に現れる傾向があり、エスニシティと宗教、及び、一般に娘の一人が老親のもとに残る傾向との関連が示唆された。さらに、同じ地域での自立精神のあり方の連続性・断続性の比較対照資料をまとめるために、1980年代における高齢者の自立のあり方を表す活動について、研究代表者が、高齢者センターのキッチンにおける高齢者ボランティアの役割と、それを可能にする社会的脈絡を民族誌的に明らかにした論文を公表し、研究分担者が、1980年代の当該地の民族誌資料に、1970年代後半のカリフォルニアでの調査結果を加えて、自立精神が文化概念として地域を越えて表現される実態を著作として公表した。いずれにおいても、高齢者が働くことに自立精神を見いだし、それを可能にする場を生み出す社会的システムが、日本におけるあり方よりも、整備されてきていることが示唆されている。
|