1998 Fiscal Year Annual Research Report
複雑社会における社会・政治知能システムの構築に関する情報民族学的研究
Project/Area Number |
10610312
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
山本 匡 国立民族学博物館, 民族学研究開発センター, 助手 (40262381)
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Keywords | 自律分散社会 / 社会システム / 政治システム / 複雑系 / カオス / 自由主義 / 政治過程 / 意思決定プロセス |
Research Abstract |
世界の各地で社会的価値が大きく揺らぎ世界システム全体の変容が認められる中で、混沌とした諸相を展開する社会現象から新たな社会システムの自然な生成が予想される。新たな社会システムを想起するにあたって、その母胎としての社会が普遍的に複雑であることが認識されなければならない。かかる認識に基づき、社会的複雑性を保持する政治・社会システムの成立条件につき整理した。 すなわち、分散する自律的で異質な主体とその相互作用からなる社会から生起するコンピュータ上での重層的・重合的な仮想社会のモデルを考える。これは自由社会のモデルとして、分散する自律的主体により構成される自律分散社会を基礎とし、社会の実権力性を排除し成層化社会の創発的性質を享受することを企図するものである。 これらの主体間で仮想的に生成される社会は、不均質な或いは非対称な情報の不完全性に基づく相互関係から生成される。そこで、形成されるcommunityの規模や発生数と階層数、境界の性質と変化について調べた。その上で、社会的複雑性の発現条件としての重層性、重合性、総結合性、自律分散性、情報限界につき、その性質を厳密に論じ数理化を行いカオスカ学的意味での複雑性の可能性等を調べた。例えば重層性の表現はカオス的性質を発現し、階層的意思決定がある種の不確実性を持つことを論じた。また、多重階層縦断ループ構造など典型的構造が複雑社会を作ることを考察した。ここで、成層化し複雑な相互関係を内包する複合的な社会における政治的意思形成過程の性質や政治的記号操作の波及過程の性質が問題となる。特に各局所社会が自律的に変動するとき、情報の非対称性下における政治行動問題が発生する。 以上の中間結果に基づき、平成10年度総研大国際シンポジウム葉山セッション[複雑系への戦略-構成と記述]において「社会的複雑性と情報の社会政治学」とのタイトルで講演発表を行った。
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