1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10610322
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
中野 節子 金沢大学, 文学部, 助教授 (60019338)
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Keywords | ジェンダー史 / 仮名草子 / 儒学 / 国学 / 只野真葛 / 女筆手本(にょひつてほん) / 往来物 |
Research Abstract |
本年度の作業は次の三点にまとめられる。 (1) すでに拙著『考える女たち』で対象とした近世前期について、『仮名草子集成』(東京堂出版)ほか、書道手本などの内容から、成果の確認や新たな側面を見出そうとしている。 (2) 享保期以降主に中期におけるジェンダーのあり方を往来物を中心に研究した。主に使用したのは『往来物大系』(大空社)であるが、その他、随筆類、日記類を研究対象としている。この時期は国学が勢力を持ってくるが、女性においては抑圧的な儒教、それに対して女性の解放に寄与した国学という図式が従来出来ている。しかし、先の研究で明らかにした、前期に持った儒教の開明性を念頭に置いて、国学の影響を再考している。 具体的な例では、只野真葛と如来教の教祖きのについて考察している。これらについてはすでに多くの研究があるが、先の視点で新たな評価を目指している。同時代で境遇を全く異にした両者の共通点をみることも課題である。そこでは男性も含めた社会全体の動きを念頭に置くべきだと考えている。 また、風俗について主に絵画史料から文書史料では窺えない実態を調べている。 (3) 近世全体を通じて随筆類、絵画史料、日記類(女性の日記のみでなく木村兼葭堂、頼春水・静子など)などからジェンダーに関する記事を摘出、およびそれらに関する研究から、近世全体の見通しを立てている。 研究から見えてきたことの例は、国学の影響力は旧来の女性の古典的教養と合致するため、才能を出す余地はあるものの、過度な評価は出来ないこと、むしろ、儒教も背景として進展する社会・精神の進展を重視すべきこと、また、風俗の変化は近代におけるジェンダーのあり方に通じていることなどが指摘できると考えている。
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