1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10610323
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
稲葉 伸道 名古屋大学, 文学部, 教授 (70135276)
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Keywords | 青蓮院 / 三千院 / 随心院 / 門跡 / 足利義満 / 門跡衆 / 門流 / 延暦寺 |
Research Abstract |
研究題目「室町時代における幕府と王朝の寺社政策」の第2年度として、本年度は前年度に収集した「三千院文書」「随心院文書」および新たに調査した「青蓮院文書」を検討し、延暦寺の門跡の成立とその展開を追及した。室町時代、義満は公家衆を自己の家来として組織しようとしたが、それと同様に権門寺院の門跡を門跡衆あるいは門跡党として組織しようとした。これは従来の国家による権門寺院の統治のあり方とは異なるものであり、近世の幕府による寺院統制に通じるものである。この門跡という貴種身分の僧あるいは院家の成立はいつから始まるのか。定説では平安末期であるが、鎌倉末期との説もあり、いまだ確定していない。そこで、研究題目とは時代が遡ることになるが、青蓮院門跡の成立を検討した。青蓮院については先の「青蓮院文書」と「華頂要略」が検討すべき史料であるが、検討の結果、 1 青蓮院門跡とは青蓮院を中心とする複数の院家・寺院・坊の集合体である。 2 そのような複合体としての青連院門跡が成立するのは慈円が門跡であった鎌倉初期、13世紀に入ってからである。 3 門跡の語は、本来、その一門・一流の「跡」、後継者、門流を意味しており、複合体を意味する語ではなかった。それが、諸院家全体を一つの門跡・門流のなかの一人の人物が継承するものとなっていくと、その複合体全体を指す名称が必要となってくる。そこで採用されたのが門跡の語である。 4 門跡の名称をどうするかは、ある段階でその複合体を一つの組織と認識した人物やその周辺が、そのような組織体の始まりを誰と考えていたかによって決定される 5 複合体としての門跡が維持、継承されていくためには門跡統合の原理・理念が必要である。 およそ、以上のような見通しを得た。このほか、興福寺大乗院・一乗院門跡、及び東大寺東南院門跡についても検討したが、今後は、公家の日記を検討し室町期の門跡までの展開を追求する予定である。なお、今年度は資料整理のためにパソコンを購入した。
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