1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10610326
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
平 雅行 大阪大学, 文学部, 教授 (10171399)
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Keywords | 鎌倉幕府 / 鶴岡八幡宮 / 勝長寿院 / 幕府僧 / 延暦寺 / 青蓮院門跡 / 定豪 / 仁和寺御室 |
Research Abstract |
幕府僧の実態解明のためには2つの基礎的作業が必要である。1つは鎌倉で活動した僧侶史料のデータベース化であり、もう1つは日記や旧仏教関係史料から京都を中心に展開した僧侶の活動記事をデータベース化することである。両者が揃って初めて幕府僧の実態を立体的に把握することが可能となる。 今年度は前者については、『吾妻鏡』『神奈川県史資料編 古代・中世』(1)(2)(3)上、『鎌倉市史』『静岡県史 中世資料編』や鶴岡八幡関係史料・系図史料などの検出を終えて、第1の作業をほぼ完了した。後者については予定通り延暦寺僧のデータベース化を進め、『門葉記』『阿娑縛抄』『天台座主記』など中世延暦寺の基幹史料の検索を終えるとともに、更に『群書類従』『続群書類従』『歴代残闕日記』『勘仲記』『公衡公記』『花園天皇日記』等の検索作業を終えた。次年度は寺門関係史料や未活字史料の検索を中心に行う予定である。 こうした作業を元に、2本の論文を公にした。「将軍九条頼経時代の鎌倉の山門僧」では、実朝暗殺から宝治合戦に至る約30年間について、鎌倉の山門僧の活動状況を検討した。そして、(1)将軍頼経と青蓮院門跡が実家の九条家を介して強固に結びついていたこと、(2)青蓮院門徒を始め数多くの山門僧が鎌倉で活動しており、彼らが鎌倉での台密修法の展開を中心的に担ったこと、(3)山門僧の多くは将軍頼経と共に帰洛し、当該期の山門派の盛行が北条時頼の時代に継承されなかったこと、を明らかにした。 「定豪と鎌倉幕府」では、幕府僧の頂点にあった定豪が、承久の乱後、京都に進出し東寺一長者にまで昇進した経緯を分析した。そして先行研究を批判して、(1)定豪の長者就任が朝幕開係の中で決せられていたこと、(2)院権力に支えられた仁和寺御室の地位を定豪ら幕府僧が脅かしていたこと、を指摘した。
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Research Products
(2 results)