1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10610330
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Research Institution | KOCHI UNIVERSITY |
Principal Investigator |
荻 慎一郎 高知大学, 人文学部, 教授 (60143070)
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Keywords | 鉱山 / 対馬藩 / 銀鉛山 / 佐須 / 鉛製錬 |
Research Abstract |
本年度における研究上の知見等〜本年度は昨年度からの二年度にわたる研究のまとめの年度であるので、研究成果の取りまとめにむけて、長崎県立対馬歴史民俗資料館の未調査鉱山関係史料の写真撮影による収集を進めながら、既収集史料の解読と整理分析を中心に作業を進めた。その結果、佐須銀鉛山については、昨年度にその概要を究明することができていたが、元文2年(1737)の閉山後も、数年後に廃鉱石利用を目的に再開発申請が許可され、近代に至るまで断続的に稼行されていたことを史料によって新たに解明できた。また開発時における九州その他からの労働力移入の様相や「欠落」等の鉱山からの逃亡、特に離島による船を調達した欠落の有り様など、離島に存する近世鉱山の特色を、一層具体化し得た。また、佐須銀鉛山以外の対馬藩領鉱山に関しても、佐護銀山、琴銀山の開発について、従来の地域史で紹介されている事実とは異なる点や、近世中期の龍良金山の開発に関わる労働力不足に対応した「奴婢」労働力投入など事実等、新たな知見を得ることができた。特に中小鉱山については、佐須銀鉛山に対する藩の姿勢と相違があり、その(再)開発をめぐっては、地域住民の反対が強く、藩権力内部の農村支配にあたる郡方と鉱山支配の財政方とは対立の局面が多くあり、その論点や、藩首脳部の鉱山再開発をめぐる基本的政策志向について多くの知見を得ることができた。製錬技術については、製錬用炭が樫木を原料とするため、当地の農民の食料源の一つである樫実採取など樫木保持の問題対立があり、鉛の鉄還元法採用の地域的背景についても予見できた。
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