1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10610341
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Research Institution | Yasuda Women's University |
Principal Investigator |
本多 博之 安田女子大学, 文学部, 助教授 (30268669)
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Keywords | 貨幣 / 撰銭 / 貫高制 / 石高制 / 銭 / 金銀貨 |
Research Abstract |
これまで史料調査の際、原文書や少量の史料群の写真撮影に使用してきた通常のカメラに加え、今回新たにマイクロカメラを撮影機材として導入し,近世萩藩によって編纂された冊子形態の膨大な史料群の写真撮影が可能になった。今後、史料収集に大いに活用していく予定である。今年度行なった出張調査としては、主に山口県文書館を訪ね、戦国期および豊臣期関係の史料の写真撮影、影写本・謄写本・写真帳の閲覧等の方法で史料収集を行なった。特に、当館で新たに公開され始めた「遠用物」の閲覧・撮影は、今後の研究方向を探る上で大きな収穫であった。また、収集した史料については、研究専用にノートパソコンを導入し、データベースソフトを活用して地域別および編年別の整理に着手した。 今年度に進めた研究内容としては、1991年に「毛利氏領国における基準銭と流通銭」を論文発表したのちに、アジア史および考古学の分野で新たな成果が積み上げられてきた中世貨幣の問題を、日本史(文献史学)の立場から改めて取り上げ、戦国・豊臣期における貨幣通用の実態とそれに対する公権力の対応を、当該期の東アジアの社会変動を視野に入れながら考察し、大名権力の分散状態から統一政権が誕生するという権力の集中過程で、金銀も含めた貨幣の流通形態の変容と、それが公権力の領国支配や権力編成にいかなる意味をもったのか整理した。そして、撰銭状況の発生から貫高制を経て石高制が成立するまでの過程を、特に貨幣基準額の成立と公権力の権力編成の観点から明らかにした。 今後は、収集した史料の分析を進めるとともに、惣国検地の問題も含めて、地域の視座から豊臣政権下の毛利氏権力や領国の実態、そしてその史的展開について解明して行く予定である。
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