1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10610350
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
津田 芳郎 北海道大学, 文学部, 教授 (30091474)
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Keywords | 戸婚田土 / 恩義 |
Research Abstract |
本年度はあらかじめ提出しておいた研究計画に従って(1)宗代の民事法を整理分類し、あわせて(2)明清代の民事法関係資料の調査収集に努めた。(1)の課題については、謝金を用いて大学院生の協力を仰ぎ、先行研究をリストアップするとともに、基本的な文献から民事法関連記事を収集し分類整理した。また、以前にマイクロフィルムの形で収集しておいた関連資料を焼き付けし、利用しやすい形にした。(2)の課題については、東京および京都方面へ資料の収集に赴いた。さらに、冬季休業期間を利用して北京に赴き、中国人研究者と研究課題をめぐって討論し、いくつかの有益な啓発と指導を得ることができた。こうした活動を通じて明らかとなったことの一つは、宗代に民事法が比較的豊富なのは、宗代にはいわゆる唐宋変革と呼ばれる変革がなお進行中でありせず、新たな事態に対する安定したルーティンワークや一貫した経験・秩序が形成されていないことにその一因が求められるということである。この点につき現在のところ、研究成果を論文の形で発表するには至っていないが、研究に関連する問題につき、平成10年11月14日に東京都立大学で開催された中国史学国際会議準備会:宋元時代史部会において、「宋元時代の身分と法制-雇傭人と佃客を例として-」と題して研究発表を行った。当日は北京大学歴史系の張希清教授が私の発表に対する評論を行い、会場の参加者からの意見とあわせて、今後留意すべき問題点が明らかとなった。すなわち、宗代のみならず中国社会における私的な社会関係に関わる身分法は、家族・宗族の秩序における「恩義」の存在を離れては論じられないという点である。逆に言えば、中国人は私的社会関係に差別を設定する際に「恩義」以外の尺度を持たなかったということでもある。
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